odd_hatchの読書ノート

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会田雄次「世界の歴史12 ルネサンス」(河出文庫)-2

2016/04/11 会田雄二「世界の歴史12 ルネサンス」(河出文庫)-1 の続き。

 今度はルネサンスのネガティブな面。
アヴィニョンの捕囚のあと、法王権は再び強くなる。地方教会ができて、農民他の平信徒を教会に組織化する。目覚めてから寝るまで、生まれてから死ぬまでを教会が統制するようになる。人々が宗教的情熱を持つようになった。逆に言うと、宗教が世俗化・形式化して、教会や修道院が日常生活や法などに介入するようになる。10分の1税、初収入税、袈裟代、免罪符販売など民衆を好き勝手に収奪するようになる。一方で聖職者や司祭には妻妾持ち、身内びいき、酒やとばくなどの悪徳屋堕落を見せ、ラテン語を読めずまともな説教もできない堕坊主が多くでる。このあたりの不満が多くの人に共有されて、宗教改革運動がおこる。12-13世紀の宗教改革は法王と国王らによって殲滅されたのだが、15-16世紀の改革運動では決着がつかない。地方領主や商人、貴族などの支持者が増えて、容易に弾圧できなくなっている(フス戦争、ドイツ農民戦争などをへて政治的になったのも違いのひとつ)。ルターやカルヴァンの運動は有名だし、その影響下でオランダ独立戦争も起きる。フランスでは新旧教徒の抗争は国王の継承者を巡る争いといっしょになって複雑な様相になり、聖バーソロミューの虐殺の不寛容からナントの勅令の寛容までの複雑な動きになる(ここは堀田善衛「ミシェル 城館の人」に詳しい)。ローマの教会では対抗宗教改革運動も起こる(その流れにフランシスコ・ザビエルの来日がある)。このような宗教間の争いに加えて、日常では異端審問、魔女狩りが行われる(中世末期からおきていたが、もっとも被害者の多いのはこの時代)。
・ヨーロッパは膨張し、ヨーロッパ以外の人々と出会う。そこでは暴力による迫害、虐殺と、資産の収奪が行われた。ことにアメリカ大陸でひどいことになった。多くの人が殺され、文化資産が破壊され、財宝が破壊された(なので、インカ帝国ほかの先住民の装飾品はあまり残されていないらしい)。そのあとには、住民の収奪と文化的な同化政策が行われる。この破壊と収奪が継続して行われ、現在の差別や格差の原因になっている。
(新大陸などヨーロッパの拡大先では虐殺があったのは事実だが、人口激減の主要な理由は彼らの持ち込んだ病原菌による伝染病だという。
2016/03/22 ジャレド・ダイアモンド「鉄・病原菌・銃 下」(草思社文庫)-1 )
 中世で準備された「ヨーロッパ」的なことがルネサンスの時代に拡大した、ということになる。近隣にあるビザンツイスラムの世界がこのころから落日に向かう(たぶん土地の再生能力がなくなり、農業生産性が落ちたのが理由。レバノンは杉の巨木の産地をして有名だったが、ルネサンスのころにヨーロッパ人の需要に応じて刈り尽くし、森は再生しなかった。数百年たったいまは砂漠)。変わってヨーロッパの経済成長が著しくなり、武力と好戦性が組み合わさって、周辺地域を蹂躙していった。武力と好戦性は内側にも向かい、レイシズムと宗教的不寛容が広がる。
 なるほど、ヨーロッパの膨張は、経済成長を経て相対的な豊かさを手に入れた。人権意識と民主主義を発見することができた。しかし、その利益や権利は一部の人に限られる。マイノリティの権利は無視されたし、カルトや急進派の暴力が蔓延し、不寛容が世界(ヨーロッパ以外も含む)を席巻した。このあと16世紀からのヨーロッパの近代が世界を覆い尽くした(だから批判は主にここに向けられる)のだが、「近代」の問題はルネサンスには出揃っていたといえる。時代区分として「ルネサンス(復興)」を使うのは、実態に即していないように思うなあ。それだと、この時代に起きたことをまとめていないように見える。まあ、自分は歴史家ではないので、愚痴はここまで。

 さて、河出の世界の歴史シリーズの「世界の歴史12 ルネサンス」は、この前の巻にある鯖田豊之「世界の歴史09 ヨーロッパ中世」が名著だったので期待していたら外れた。自分なりの史観を反映したというのだが、卑俗な人生訓や個人的な述懐に過ぎない。このあと歴史研究から離れたとあとがきにあって、著作リストをみると本書を書いたころには日本人論日本文化論に移っていたので、さもありなん。別書で補完したほうがよいだろう。