odd_hatchの読書ノート

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レフ・トロツキー「文学と革命 下」(岩波文庫)

 下巻はロシア革命以前の亡命時代に、主にドイツの雑誌に書いた小文を集めている。1900年前後のドイツには総合雑誌のようなものがたくさんあって、文化の傾向を主導する役割を果たしていた。そういう雑誌に小文を書くことで名を馳せたジャーナリストがいたのだが、名を忘れた(生松敬三「二十世紀思想渉猟」岩波現代文庫に登場しているのだが、手元にない。ごめんさない*1)。で、トロツキーも同じような書き手の一人だった。ここでは生活のための糊口しのぎという文章なので、「革命」「経済」「マルクス」などへの言葉は影を潜めている。革命家トロツキーの姿はここにはほとんどない。かわりに現れるのが文芸評論家トロツキーの姿で、よく読んでいるなあ、よく出かけているなあ(1911-14年のウィーン分離派展覧会の感想を書いている)、いろいろなことに興味をもっているなあ、という感想。名を思い出せないジャーナリストには比較できないにしても、しっかりと時代をみることのできるジャーナリストとしてもトロツキーは一流になったに違いない。
 山口昌男「歴史・祝祭・神話」(中公文庫)にトロツキーのことが出てくる。それによると、1930年代、スターリンはロシア・フォルマリストを徹底的に弾圧する(その一方で、スターリン言語学の論文を発表している)。トロツキーはそれより先に「文学と革命」の中で、ロシア・フォルマリストを批判しているのだが、トロツキーはフォルマリストたちをしっかりと正確に把握していた。そして、トロツキーの方法がフォルマリストに似ているということと、その後の生涯が似ているということを指摘している。
(2008年10月22日)

  

*1:2013/10/23 たぶん文化批評家のカール・クラウスです。