odd_hatchの読書ノート

エントリーは2800を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2022/10/06

哲学思想

マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」(ハヤカワ文庫)-1

ハーバード大学の政治哲学教授の講義はとても人気があった。30年間の受講生が14000人!を超えたので、映像に収録して放送した。その時の内容に教授が手を入れて、テキストにしたのがこの本。アメリカでもこの国でも盛んに読まれたという。遅ればせながら入手…

マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」(ハヤカワ文庫)-2

2016/07/6 マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」(ハヤカワ文庫)-1 2010年の続き 続けて後半。 平等の原理(ジョン・ロールズ) ・・・ 社会契約が薄ばれているのは。ロックは暗黙の合意といい、カントは仮想上としたが、ロールズはどちら…

マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」(ハヤカワ文庫)-3

2016/07/6 マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」(ハヤカワ文庫)-1 2010年 2016/07/5 マイケル・サンデル「これからの「正義」の話をしよう」(ハヤカワ文庫)-2 2010年の続き 徳や善を考えるのはこの国ではなかなか難しい。日常ではその…

竹内靖雄「経済倫理学のすすめ」(中公新書)

タイトルはあまり聞かない学問の名前であるが、これは経済学でも倫理学でもない。我々が日常で直面する問題に対して、徳や正義で判断するのではなく、人に「ノブリス・オブリージュ」のような態度を要求せず、感情をカッコにいれて勘定で判断するようにしよ…

イマヌエル・カント「啓蒙とは何か/永遠平和のために」(光文社文庫)-1

カントの政治哲学や歴史哲学の論文を読む。道徳論の難解さはここにはなくとても平易(下記にあるように翻訳のせいかもしれない)。楽しみながら高揚しながら読むことができました。まあ、素人であるおいらがカントの考えを正確に伝えられるはずもなく、解説…

イマヌエル・カント「啓蒙とは何か/永遠平和のために」(光文社文庫)-2

2016/06/30 イマヌエル・カント「啓蒙とは何か/永遠平和のために」(光文社文庫)-1 1795年 の続き つづいて「永遠平和のために」を読む。政治哲学ではあまり言及されることがないようだが(おいらの偏見)、別の分野の本で言及されることがある。この国では…

久野収/鶴見俊輔/藤田省三「戦後日本の思想」(講談社文庫)-2

2015/12/23 久野収/鶴見俊輔/藤田省三「戦後日本の思想」(講談社文庫)-1 の続き。 社会科学者の思想――大塚久雄・清水幾太郎・丸山真男 ・・・ ほかに名の出るのは、川島武宜、内田義彦、花田清輝、大河内一男、宮城音弥、渡辺慧、都留重人、南博、磯田進、…

久野収/鶴見俊輔/藤田省三「戦後日本の思想」(講談社文庫)-1

1957年から中央公論に連載された論文。戦後の日本の思想運動から6つのタイプを抽出する。3人で分担して一人がレジュメをつくって発表。そのあと、3人の対談となる。このやり方はたぶんアメリカのゼミなどではあっても、この国のアカデミズムにはなかった(好…

日高六郎「戦後思想を考える」(岩波新書)

日高六郎は1917年生まれ。戦後東大教授。1968年の東大紛争で辞職。リベラルとして社会運動にいろいろ参加。この本は1970年代後半に書かれたさまざまな文章を再編集して、1980年に出版された。個人的な記憶でいうと、この本に収録された元の文章を雑誌(主に朝…

ジョージ・スタイナー「ハイデガー」(岩波現代文庫)-2

2015/12/17 ジョージ・スタイナー「ハイデガー」(岩波現代文庫)-1 の続き 2 存在と時間 ・・・ (承前)。本来的な自己の回復は、「もはやそこにないこと」に直面することで行なわれる。そのような無において自己の全体性と有意味性を把握することが可能に…

ジョージ・スタイナー「ハイデガー」(岩波現代文庫)-1

現象学とハイデガーの本(おもには解説書)はいろいろ読んできたが、どれを読んでもよくわからない。むしろ若いときより理解や共感が浅くなっているのではないか、若いときの方がより理解・納得していたのではないかと不安になる。彼の言葉が変わるというこ…

ヘルムート・プレスナー「ドイツロマン主義とナチズム」(講談社学術文庫)-2

2015/12/10 ヘルムート・プレスナー「ドイツロマン主義とナチズム」(講談社学術文庫)-1 続けて後半。 7 伝統の欠如と生の歴史的正当化への要求 ・・・ 1871年に成立したドイツ帝国は経済的繁栄を遂げ、アメリカに次ぐ世界第2位の総生産を達成。それによっ…

ヘルムート・プレスナー「ドイツロマン主義とナチズム」(講談社学術文庫)-1

もともとは1935年に「市民時代末期のドイツ精神の運命」というタイトルで出版された。この中身を正確に示しているわけではないタイトルはドイツ哲学の韜晦趣味もあるだろうが、当時の政権に対する配慮もあっただろう。注意深く設定されたタイトルではあるが…

羽仁五郎「君の心が戦争を起こす」(光文社)

出版されたのは1982年暮れ。自分の見聞でこの年をまとめると、前年ごろにポーランドの「連帯」運動が非合法化され、韓国の軍事政権が別の軍事政権になり、中国の四人組裁判の影響が取りざたされ、イランのイスラム革命が混沌とした様相を示し、ゴルバチョフ…

羽仁五郎「教育の論理」(講談社文庫)

この本に書かれたことのいくつかが、筑波大学と関係している。「新しい大学」と目されて作られた大学でこの著者の講演会を開こうとしたところ(開学3年目の1977年)、当局のお達しで不許可になる。「本学に批判的な人物の講演は認めがたい」とかいう理由。197…

柏木博「肖像の中の権力」(講談社学術文庫)

絵葉書、雑誌の表紙、ポスター、広告など、およそ作家性とは無縁のグラフィックがある。その作者の無名性により意味合いはないとされるが、たくさん収集したとき、おのずと権力の意思とか大衆の欲望が見えてくる。まあ、そんなことをとくに1930-40年代の上記…

なだいなだ「権威と権力」(岩波新書)

サブタイトルが「いうことをきかせる原理・きく原理」となっていて、もしかしたらこちらのほうが主題をよくあらわしている。「権威と権力」というタイトルであっても、予想するような権威と権力の定義を明らかにすることはしていない。むしろ、われわれはい…

ヴィクトール・フランクル「夜と霧」(みすず書房)

この絶滅収容所の記録を前にすると、おののき、恐怖し、震撼し、その記述が際限なく続くことに絶句し、沈黙するしかないところにいってしまう。これほどの惨劇をよくも人間が・・・とか、これほどの虐待をよくも人間が・・・とか、これほどの勇気をよくも人…

村上龍「EV cafe」(講談社)

1984年に村上龍と坂本龍一がゲストを読んで対談した記録。ゲストで呼ばれたのは、吉本隆明、河合雅雄、浅田彰、柄谷行人、蓮実重彦、山口昌男。 この時代、浅田彰の「構造と力」が売れて、ニューアカデミズムという名前で若手の哲学者・評論家の本が大量に流…

山口昌男「道化の宇宙」(講談社文庫)

山口昌男の文章を読むと、元気が湧いてくる。大量の引用、大量の書肆、たくさんの人名、たくさんの作品、幾多の地名。自分の知らないことはたくさんある、それを知ることは楽しい、それがつながることは楽しい。こんな気分になって、知的エネルギーがわいて…

山口昌男「歴史・祝祭・神話」(中公文庫)

1973年初出で、雑誌「歴史」に一挙掲載されたとか。たぶん著者の基本的な考えがまとめられている。「中心と周縁」理論は以下の引用で概要を理解できるので、とても長くなるが引用しておく。自分の備忘をかねて。 「政治権力の究極的なよりどころは生賛を神に…

山口昌男「本の神話学」(中公文庫)

1970年代前半の論文が収録。哲学・思想系の「オカタイ」雑誌に掲載されたものだと思うけど、高校の世界史と倫理社会(今はなんて学科名だい?)の知識を持っていればだいたい理解できる。面白いのは、いくつかのキーワードを元にそこにリンクするほかの本・著…

渡邊芳之 「「モード」性格論」(紀伊国屋書店)-1

ずっと自分は他人の性格を読んだり、行動パターンを見出せない(というバイアスを持っているのだろうなあ)。なので、クラスメートや会社の同僚を紹介するのがすごく苦手。自分の行動にも臆病なところと激情的なところがあって、状況に応じてどの感情が先に…

渡邊芳之 「「モード」性格論」(紀伊国屋書店)-2 なぜ心理学者は血液型性格診断を信じないか。

2013/04/09 渡邊芳之 「「モード」性格論」(紀伊国屋書店)-1の続き この章は「血液型性格診断」の問題を説明。重要なことなので、詳細にまとめる。 第3章 血液型神話解体 ・・・ この「学説」の提唱者は日本人。1930年代の古川竹二という東京師範学校の教…

吉野源三郎「君たちはどう生きるか」(岩波文庫)

昭和10年に山本有三らといっしょに編集した「日本小国民文庫」の一冊。のちに(1960年代)、ポプラ社で復刻されている。たぶん小学生のときに読んだとおもうのだが、記憶は定かではない。しっかりと読んだのは岩波文庫に収録された1982年のとき。今回は約30…

小田垣雅也「キリスト教の歴史」(講談社学術文庫)

「旧約聖書を生んだユダヤの歴史から説き起こし、真のイエス像と使徒たちの布教活動を考察。その後の迫害や教義の確立、正統と異端との論争、教会の堕落と改革運動など、古代から中世を経て近代、現代に至るキリスト教の歴史を、各時代の思想、政治・社会情…

生松敬三/木田元「現代哲学の岐路」(講談社学術文庫)

1976年に中公新書ででたものを1996年に文庫化したもの。1930年前後に生まれた二人の対談で、19世紀から現在までの思想を概括したもの。哲学書を読み始めたものにとっては、それまでの読書の結果を位置づけていくいい指導書になるのではないかしら。デカル…

デカルト「方法序説」(岩波文庫)

最初に読んだのは、落合太郎訳の岩波文庫だった(本文より訳注のページ数が多いというのに驚愕。これが学問なのかとその高さに呆然とした)。あとで小場瀬卓三訳角川文庫も読んだ。今調べると、 谷川多佳子訳岩波文庫、 山田弘明訳ちくま学芸文庫、野田又夫…

デカルト「哲学原理」(岩波文庫)

「哲学原理」は「方法序説」第4部以降にデカルトがこれは確実な知識あるいは原理だと「証明」したものを箇条書きにまとめたもの(原本からそうであったかは不明。もう少しあとに編集された本によるのではないかな)とされる。前半第1部には「我思う故に我あ…

みすず編集部「逆説としての現代」(みすず書房)

老舗の雑誌みすずに掲載された対談集。1959年から1970年まで。誰もかれも亡くなってしまったなあ、という感慨にふけり、2011年7月現在吉田秀和が存命という驚き。書籍をめぐる対談は同社から出版された本の販促も兼ねていたのだろう。 芸術と政治――クルト・…