odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

上田閑照「西田幾多郎」(岩波同時代ライブラリ)

 2003年に増補改訂して岩波現代文庫で再販された。自分が読んだのは古いほう。
 西田幾多郎の本は高校生のときに「善の研究岩波文庫を購入したが、旧字旧かなであることもあって挫折。今は新かなに変わっていて、もう少し読みやすくなっているのかな。彼の弟子の三木清の文章を読んでも、どうにも西田哲学というのは自分にはよくわからないので、こういう解説書から入ったほうがよいだろうと思って購入。
 晩年に「場所」に関する論述が興味深かった。それというのも中村雄二郎氏の「トポス」に関する解説をいくつか読んだから。たぶん「共通感覚論」とか「臨床の知とは何か」あたりに記載があったと思うが処分済なので、確認できず。すみません。「トポス」はたしかアリストテレスにでてくる述語で、この国に移入されたとき、トポスと「場所」がどのように出会ったのか、あるいは差異を生じたのか気になった。
 とはいうものの、西田以下の京都学派にはさほどの興味がない。たぶん彼の弟子筋の人たちの考えに共感を持てなかったから。食わず嫌いであるのはわかっているがそのままにしておく。だから、この本の内容については書かない。ただ、西田の「人は人吾は吾なりとにかくに吾行く道を吾はいくなり」「人は人吾は吾吾はわが誠を尽くすより他なしと思い居る」という句と言葉は気に入ったので、残しておくことにする。
 多くの思想書、社会論にあるように、最後は現代社会の問題、脅威の指摘があり、そこから脱却するための方法として新たな「共同体」の設立が呼びかけられている。1980年代に書かれた本で、そのときから地域とか共同体とかを重視する考えが提唱されていたのだね。この社会を作っている組織、国家に対抗する共同体を作ったとしても、それが新たな抑圧や収奪を発生させ、元の組織、国家よりも悪質なものになってしまう例は多々あった。そのあたりまで考察しぬくことが必要と思う。「伝統」「民族」「慣習」「義務」、このあたりを強調する共同体主義には気を付けたほうがよいし、自分は彼らにまったく賛同しない。