2017-01-01から1年間の記事一覧
会社で接待担当の雷門亮介は独自の接待理論をもち、きちんとしたデータベースをもっていた。そのために会社の売上の3分の1は彼の接待で生み出していた。社長秘書と情事をしたその場所に、出版社勤務の秘書の兄を会う。彼はベストセラーを産む凄腕ディレクタ…
七瀬は幼少のころから人の心(というか内話)を読むことができた。彼女の能力は他の人を恐怖させ(なんて勘の良い子ならまだしも、自分の心を読まれたことを憎悪する)、「掛け金をはずす」「掛け金をおろす」ことを意識的に制御して、自分の能力が知られな…
1972年の短編。万延元年のラグビー 1971.12 ・・・ 桜田門外の変、井伊直弼が暗殺された。どうやら井伊家が牛肉の輸入を禁止したので恨みを買ったらしい(笑)。が、首が行方不明になり、井伊家は葬儀を出せないので困る。急遽、忍者チームにラグビーを教え…
山鹿建設に最近入社したばかりの経理課員である「おれ(絹川)」は二重帳簿をみつけてしまう。この会社は常務派と専務派が激しく対立していて、経理部長は専務の命で裏金をつくる工作をしていたらしい。派閥抗争には無縁であるはずだが、社長秘書のささやき…
1973年前半の短編。 心臓に悪い 1972.12 ・・・ 柘榴島に配置転換になった男。心臓病の持ち主で妻と仲が悪い。8か月分の薬をもって引っ越したが、薬が手元にない。妻の手で別便で送られたのだ。その薬がないとひどい発作が起こる。なんども長距離電話をかけ…
1973年に半年間夕刊フジ(日刊紙)に連載されたもの。記録を見ると19歳目前の大学1年生の時に買って、一日で読みおえている。おもしろかったので、同じ紙面に連載された他の作家のエッセイにも手を出したはずだが、井上ひさしのに少し興味を惹かれただけで、…
1973年後半の戯曲と短編。スタア 1973.10 ・・・ 戯曲。タレントの新婚夫婦が新居入居のパーティを開くことになった。苦労したときのために、ふたりとも元恋人やヒモがいて、ニュースになった彼らの生活に割り込もうとする。マネージャーに女中(ママ)は彼…
1973-74年の短編。このあたりはさまざま出版社の原稿の取り合いがあったのか、複数の文庫に収録されている。「ウィークエンド・シャッフル(講談社文庫)」「おれに関する噂 (新潮文庫) 」など。 犬の街 1973.12 ・・・ 集金の金をもった青年が途中の駅で降…
1972年から1974年にかけて雑誌連載された連作短編集。書かれた年にはすでに任侠映画の人気は下降、西部劇映画も制作されなくなっていて、ギャング映画はすたれている(というところに、「ゴッドファーザー」1972年が大ヒットしていたわ)。もちろん直後にカ…
1975-76年の短編。このあたりの作品はさまざまな出版社の原稿の取り合いがあったのか、複数の文庫に収録されている。「メタモルフォセス群島(新潮文庫)」「バブリング創世記 (徳間文庫) 」など。 メタモルフォセス群島 1975.02 ・・・ 核実験が繰り返され…
2017/11/10 筒井康隆「家族八景」(新潮文庫) 1972年 火田七瀬を主人公にする小説の第2作。家政婦は気疲れし、露見する可能性が高いので、すでにやめている。夕方、列車にのっているとき、七瀬は思念を感じる。はじめての体験。自分と同じ超能力者がいるこ…
1975年に週刊誌に連載。そのあと単行本化。 1975年をこの本をベースに思い出すと、どうやら不況でインフレも進行しているころ(OPECが原油価格を従来の数倍にあげて、製造原価や光熱費などが値上がりしたのが理由)。年収1000万円が高額所得者の基準になって…
小説家の筒井康隆の父が、京都の動物園園長などを務めた筒井嘉隆であるのを知ったのは、このエッセイを読んだずっとあとで荒俣宏の博物学関係の本だった(タイトルは思い出せない)。なので、小説家にしてはえらく博物学に詳しいなあと感心した(後付けで言…
2017/11/10 筒井康隆「家族八景」(新潮文庫) 1972年 2017/10/27 筒井康隆「七瀬ふたたび」(新潮文庫) 1975年 火田七瀬を主人公にする小説は「家族八景」「七瀬ふたたび」がさきにあって、これが最後。初読はこの順だったが、今回は逆に読んでいる。なの…
いくつかの作品は「宇宙衛生博覧会」新潮文庫に収録。12人の浮かれる男 1975.07-10 ・・・ ルメット「12人の怒れる男」1957年は、圧倒的に不利な被告をひとりの陪審員が無罪を主張し他の陪審員を納得させる。アメリカの草の根民主主義のロールモデルみたいな…
いくつかの作品は「宇宙衛生博覧会(新潮文庫)」「エロチック街道 (新潮文庫)」に収録。エッセイ「虚構と現実」は「着想の技術」新潮文庫に収録。 関節話法 1977.05 ・・・ ビザング星人は人間に似た体形であるが、手足は細く関節が極端に太い。彼らは関節…
場所が不明の警察署の捜査会議が始まる。まあ事件はありがちなものだ。ただ、この会議が奇妙にねじれるのは神戸大助という刑事の存在。大富豪・神戸喜久右衛門の息子であり、捜査に私費を惜しげもなく投じる。その結果、通常の警察予算では賄えない大掛かり…
作家が主に中学生時代に見た印象深い映画を回想する。雑誌連載が1979年から81年にかけて。始まったばかりのころは民生用のビデオデッキは高価で普及していない。そのために、ビデオソフトも出ていない。なので、映画の記憶をたどるために、作家は戦前の「キ…
桑原武夫「文学入門」岩波新書1950年を読んで、そういうものなの?と驚いたのは、現役の作家に文学とは別の生業を持て、そうして収入の心配のないところで小説を書けとこの評論家が薦めていたこと。自分がこの新書を読んだのは筒井康隆のこの小説のでる直前…
雑誌「奇想天外(廃刊)」にたぶん1975年から1979年までの3年半連載された「涜書ノート」。このタイトルも韜晦であるが、まあ書評や評論をするつもりはなく(しかし結果として優れた評価を集めた本になった)、いかに面白く本を読んだかという記録。全部で1…
全集22で読んだ。併録は「美藝公」(感想は別エントリーで)。 「腹立半分日記」は、雑誌「面白半分」に掲載された。この雑誌名は宮武外骨のものからとったわけだが、プロの作家が編集長となり、半年間の勤めののちに次の作家にバトンタッチされた。筒井康…
1970-80年の対談を集めたもの。あとがきによると「唯一の対談集となるであろうことは確か」とある。そうであるのかどうかは不明。ちなみに、1980年代の新潮社版全集には未収録。 山下洋輔トリオ・プラス・筒井康隆(山下洋輔・森山威男・中村誠一) 1970.04 …
この世界にはなかったにもかかわらずなんとも懐かしい思いにさせられる社会が描写される。中心にあるのは映画会社。5つくらいの会社がそれぞれしのぎを削る。といっても粗悪品の量産ではなくて、芸術家が潤沢な資金と余裕のあるスケジュールで大作、小品、…
「全集23」には1980-81年の作品が収録されている。長編「虚人たち」も併録されているが、別エントリーにしたので、割愛。遠い座敷 1980.10 ・・・ 宗貞少年が親戚の家で夕飯を食べることになる。「ごんた節」が歌われ、屋敷の廊下と部屋を延々と歩く。この…
1980年代に出た新潮社の全集24巻に「マリオ・バルガス=リョサ『緑の家』」というエッセイが収録されている。そこに 「ついに結末を迎えたとき、読者に残るのはこの手法に対する感動である。(略)手法に対する感動の如く感じられるところに、この小説の新し…
2017/10/09 筒井康隆「虚人たち」(中央公論社)-1 1981年 何もすることがなく何をしたいのかわからない男が突然登場する。とりあえず彼は自分の名が「木村」であり、妻と娘・弓子が別々に誘拐されたのを思い出し、息子といっしょに追いかける。手がかりはな…
1982-83年の作品(短編と戯曲)が収録。ページの半分以上はエッセイだが、ここでは割愛。短編小説 通過儀礼 1982.01 ・・・ 成人式と晴着魔。句点と読点 1982.02 ・・・ 「この文章は。と、に関するきわめて短い考察であるそもそも昔は。も、もなかったそう…
1984年のたしか春に新潮社書下ろし長編でどんと出版された。丁寧であるが重く固い箱に入れられた本は、とても威圧的だったなあ。読者よ読めるか、と挑発するようで。 箱書きには著者のものと思われる400字ほどの文章が載っていて、テーマに即するだろう固有…
2017/10/04 筒井康隆「虚航船団」(新潮文庫)-1 1984年 第2部は「鼬族十種」。鼬はイタチのこと。 惑星クオールは流刑惑星であり、約1000年前に最初の流刑者が送られた。次第に人口を増やした鼬族は、独自に集団化し、国家を形成する。そのような惑星のク…
2017/10/04 筒井康隆「虚航船団」(新潮文庫)-1 1984年 2017/10/03 筒井康隆「虚航船団」(新潮文庫)-2 1984年 第3部は「神話」。恐るべき速度で進んだクオールの科学技術は核兵器の開発を可能にし、おろかな政治家たち(オコディ、ステーテン、イイズナ…