odd_hatchの読書ノート

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高木彬光「人形はなぜ殺される」(角川文庫)

 「新作魔術発表会・・・ここでギロチンによって首を切り落とされた美女が蘇るという奇術「マリーアントワネットの処刑」が公開されると言う。ところがその舞台裏で切り落とされる首が消失。そしてその直後の殺人現場にはマリーアントワネット役をやる予定だった綾小路百合子と思われる女性の首なし死体。ついで魔術協会のメンバーが集まった興津の綾小路家での人形轢断事件、そして綾小路佳子の轢断殺人。名探偵神津恭介の登場。黒魔術の儀式でのヒロポン中毒の杉浦雅夫の青酸中毒死。彼は生前事件の犯人を想起させる詩を残していた。そして綾小路家の三女滋子が精神病院で死んだ翌日、唯一の生き残り典子と沢村博士の結婚が執り行われようとする・・・・。」

 昭和30年(1955年)の作。時代背景にスターリンの死、吉田首相退陣などがある。登場人物のひとりが運営する匿名投資組合が破たんしたと書かれているが、似たような事件があったのだろう。
フレシチョフ「スターリン批判」(講談社学術文庫) - odd_hatchの読書ノート
 江戸川乱歩の戦前の通俗長編、横溝正史の田舎を舞台にした長編、ディクスン・カーの長編の奇怪な混淆、というところ。そういう点でいうと、発表時期より20年前に書かれていたら大傑作。残念ながら書かれた時代を考慮すると、時代遅れになってしまった。たぶん、その時代遅れの感覚は同時代にもあったのだろう。この数年後に、松本清張「点と線」(1957年)がでてくる。そして一気に社会派推理小説のブームになった。

  

江戸川乱歩「吸血鬼」(角川文庫) - odd_hatchの読書ノート
横溝正史「夜光虫」(角川文庫) - odd_hatchの読書ノート
カーター・ディクスン「爬虫類館の殺人」(創元推理文庫) - odd_hatchの読書ノート