odd_hatchの読書ノート

エントリーは2600を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2021/9/25

アメリカ文学_エンタメ

トマス・トライオン「悪魔の収穫祭 上」(角川文庫)

「悪を呼ぶ少年」に続く第2作。1973年。 大手会社の広告担当重役ネッド・コンスタンチンは社長とけんかして退社し、ニューイングランド州コーンウォール・クームという村に1700年代初頭に建てられた家を見つけ、妻と娘の3人で移住する。 この村は極めて閉…

トマス・トライオン「悪魔の収穫祭 下」(角川文庫)

トマス・トライオン「悪魔の収穫祭 上」(角川文庫) - odd_hatchの読書ノート 村がどうなっているのか、というのが大問題なのだけれど、それは新参者のネッドには把握できない。なんとなれば、村人は彼に説明しないから。現在のとうもろこし王ジャスティン…

スティーブン・キング「呪われた町 上」(集英社文庫)

およそ20年ぶりに読んで、既視感を覚えたのは、「ほかの長編のモチーフをひとつにまとめた、なんて贅沢な小説なのだろう」ということ。もちろん順番は逆。これは1975年に出版された第2作(売れない時代に書いた別の長編があるのだけど。「バトルランナー」と…

スティーブン・キング「呪われた町 下」(集英社文庫)

駆け出しの小説家ベン・ミラーズは数十年ぶりに故郷の街に帰ってきた。それは二つの目的があり、ひとつは交通事故で死なせた妻の幻影を消すため、もうひとつは彼のオブセッションである幼児体験の正体を確かめるため。メイン州にあるセーラムズ・ロットとい…

スティーブン・キング「ミザリー」(文春文庫)

人によると「モダンホラーは怖くない」そうだ。ミザリーもしかり。 「事故で動けなくなった作家を監禁し、自分だけのために小説を書かせようとする自称“ナンバーワンの愛読者”。ファン心理から生じる狂気を描くサイコ・スリラーの傑作」 『ミザリー』スティ…

F・ポール・ウィルソン「黒い風 上」(扶桑社文庫)

解説によると1930-40年代のパルプマガジンに書かれた黄禍論のパスティーシュとのこと。黄禍論の小説がこの国に紹介されるとはとても思わないので、専門の雑誌があったなど、この本を読まなければ知ることはあるまい。パルプマガジンは、ハードボイルドかSFか…

F・ポール・ウィルソン「黒い風 下」(扶桑社文庫)

物語を推進する原動力は<隠れた貌>の暗躍であるが、その全貌を知り、未来を予見できるものは一人としていない。それゆえ、大枠は史実の通りに進み、226事件、真珠湾奇襲、ミッドウェー海戦、アリゾナの原爆実験、8月6日の広島投下までがそのとおりに記述さ…

J・マッカレー「地下鉄サム」(創元推理文庫)

地下鉄をもっぱらの仕事場とするスリのピカレスクノヴェル。1919年がアメリカの初出で、「新青年」で連載が開始されたのが1922年のこと。翻訳者は「新青年」の編集長を務めた人なので、確かなことなのだろう。 サムは下町の中年独身男。スリを本業としていて…

パーシヴァル・ワイルド「検死審問」(創元推理文庫)

コネチカット州ニューイングランドの田舎で、女性大衆小説作家70歳の誕生パーティが開かれた。独身時代に書いた勧善懲悪の小説が売れに売れたという気難しい女性だ。パーティに来たのは、犬猿の仲の批評家に、出版代理人に、甥の二つの家族たち。金のない家…

ハーバート・ブリーン「ワイルダー一家の失踪」(ハヤカワポケットミステリ)

古い家、といっても18世紀の終わりから19世紀の初頭に建てられたものが歴史あるものになるからアメリカの歴史はまだまだ浅いものといえる。そういう一家としてワイルダー家がある。ここには嫌な言い伝えがあって、この一家のものは失踪するのだ、それも不可…

ハーバート・ブリーン「真実の問題」(ハヤカワポケットミステリ)

この作家は、第1作「ワイルダー一家の失踪」(ハヤカワポケットミステリ)を読んでいた。都筑道夫によると「イギリス趣味のないカー」であって、たしかこの一家の主人(というか家長)が次々と不可解な状況で失踪していくという話であった。アメリカ南部あた…

パトリック・クェンティン「二人の妻をもつ男」(創元推理文庫)

「ビル・ハーディングは、現在C・J出版社の高級社員として社長の娘を妻に迎え、幸福な生活を送っていた。ところがある晩、偶然に前の妻、美人のアンジェリカに会った。この時からビルの生活には暗い影がさし、やがて生活は激変し、殺人事件にまきこまれて…

トマス・スターリング「一日の悪」(ハヤカワポケットミステリ)

ベン・ジョンソンの古典喜劇「ヴォルポーニ」が下敷きになっている、のだそうだが、どうやら翻訳はない模様。 とりあえずサマリーを劇のように書くとだな。 序幕--ヴェニスに住む富豪が別々のところに住む3人に招待状を出す。死期が近づいてきたが、身寄りも…

ヘイク・タルボット「魔の淵」(ハヤカワポケットミステリ)

まず周辺状況から。1981年にE.ホックが「密室大集合」というアンソロジーを編むときに作家・評論家などに、密室の代表長編をあげるようにというアンケートを行った。第1位はカーの「三つの棺」、これは順当だな、第2位は驚くべきことにこの作。なにしろ1944…

クレイトン・ロースン「帽子から飛び出した死」(ハヤカワ文庫)

「奇術師の防止からウサギやハトが飛び出すように、完全密室の中から摩訶不思議な殺人事件が飛び出した! 煙がもうもうとたちこめる真っ暗な部屋の中で、各頂点にローソクが妖しくゆらめく五ぼう星形の模様のまんなかに、神秘哲学者セザール・サバット博士が…

アラン・グリーン「くたばれ健康法!」(創元推理文庫)

「全米に五千万人の信者をもつ健康法の教祖様が、鍵のかかった部屋のなかで死んでいた。背中を撃たれ、それからパジャマを着せられたらしい。この風変わりな密室殺人をキリキリ舞いしながら捜査するのは、頭はあまりよくないが、正直者で強情な警部殿――!? ア…

ウィリアム・ヒョーツバーグ「ポーをめぐる殺人」(扶桑社文庫)

「1923年、繁栄と狂乱に沸くNYに、『モルグ街の殺人』がよみがえった。作品そのままの残虐な現場と、大猿の目撃 − だがそれは序曲にすぎなかった。『黒猫』が、『マリー・ロジェ』が、ポーの作品が悪夢の連続殺人となって次々に現実化していく。探偵役は、…

ビル S.バリンジャー 「歯と爪」(創元推理文庫)

創元推理文庫に収録されたのは1975年ころと記憶している。末尾四分の一くらいが袋に覆われ、解説ともども読めないようになっていた。袋には、ここを開封しないで返品すれば代金を返しますと書かれている。結末命のエンターテインメントだからそうすることが…

ロアルド・ダール「あなたに似た人」(ハヤカワ文庫)

1976年3月のハヤカワ文庫創刊の初出は、「そして誰もいなくなった」「幻の女」「ウィチャリー家の女」などの圧倒的なラインアップで、ポケミスを買えない自分はすぐに購入した。あいにく高校生で小遣いに不自由していたので、なかなか揃えられない。「あなた…

ジャック・リッチー「カーデュラ探偵社」(河出文庫)

吸血鬼は人間の血を吸い、被害者を吸血鬼にすることによって種族を永らえている生物?である(とする)。吸血鬼同士は生殖できないということにしておこう。となると、吸血鬼という種が保存されるためには人間という宿主が必須である。このような種族増加の…

ハリイ・ケメルマン「九マイルは遠すぎる」(ハヤカワポケットミステリ)

文庫になる前にポケミスを買って読んだ。最初の作は驚きだったなあ。たぶん、論理的な演繹の執拗さにだろう。論理に行き詰ったら、特殊例だけに絞ったり、別の補助線を外から導入したりするものだもの。ケメルマンのやりかたは神の言葉の意味を考える神学的…

エドワード・D・ホック「怪盗ニックを盗め」(ハヤカワ文庫)

価値のあるものは盗まない泥棒ニック・ヴェルヴェットの短編集第2巻。第1巻は、ハヤカワポケットミステリ初発のとき(1976か1977年)に購入して、面白く呼んだ記憶がある。空っぽの部屋から盗め、というような依頼の話が一番良く覚えているな。 個々の話がど…

エドワード・D・ホック「夜はわが友」(創元推理文庫)

この作者は、レギュラー登場人物の連作短編によって有名。これまでのところ怪盗ニック・ヴェルベットとサム・ホーソーンのシリーズしか紹介されていないので、このような評価というのは揺るがない状態になっている。追加するとなると、「長い墜落」(「密室…

エドワード・D・ホック「大鴉殺人事件」(ハヤカワポケットミステリ)

アメリカ探偵作家クラブ(MWA)は、この本を読むと、作家の親睦団体で、会費を取って事務員を雇い、地区ごとの定例会に年会を開催しているのだな。そこで優秀作品その他の賞を選定している。1945年に始まって現在に至るから、この国でも「MWA賞受賞作品!」と…

ジョン・スラデック「見えないグリーン」(ハヤカワ文庫)

作者の名前は亡きサンリオ文庫の「言語遊戯短編集」で知っていた。「言語遊戯」? ジェームズ・ジョイスかナボコフ、マラルメあたりを連想して敬して遠ざけていた。で、この本を古本屋の100円棚で発見。ありがたや。中身の言語遊戯というのは頭韻、押韻、ア…

ウィリアム・L・デアンドリア「ホッグ連続殺人」(ハヤカワ文庫)

「雪に閉ざされたスパータの町は、殺人鬼HOGの凶行に震え上がった。彼は被害者を選ばない。手口も選ばない。どんな状況でも確実に獲物をとらえ、事故や自殺を偽装した上で声明文をよこす。署名はHOG−−この難事件に、天才犯罪研究家ベネデッティ教授が…

エリエット・アベカシス「クムラン」(角川文庫)

イスラエル建国前夜、クムラン洞窟で二千年の封印を解かれ発見された死海文書――。そして半世紀後、この謎に満ちた古文書の盗難を発端に恐怖の殺人事件が始まる。古文書捜索を依頼された考古学者ダビットと息子アリーは真相を突き止めるため旅立つが、接近を…

ダン・ブラウン「ダ・ヴィンチ・コード」(角川文庫)

自分の半生はこの本を読むためにあったのだ(笑)。なにしろ、 福音書 使徒のはたらき ヨハネ黙示録 「新約聖書外伝」(講談社学芸文庫) 高橋保行「ギリシャ正教」(講談社学術文庫) エドマンド・ウィルソン「死海写本」(みすず書房) 高橋正男「死海文書…