アメリカ文学_エンタメ
大不況から10年も経過していたが、経済は復興せず、青年画家イーベンは売れない風景画しか書かない。夕暮れの公園で一人の少女に出会う。数日後に再開したとき、彼女ジョニーはなぜか数年を経たかのように成長していた。イーベンは彼女に魅かれ、肖像画を描…
自分のもっているのは創元推理文庫ではなく、1975年初出のハヤカワポケットミステリ。なので、タイトルは異なっている。画像参照のこと。 さて、ヒッチコック監督の1961年の映画「サイコ」の原作であるということで、もう紹介は完了。くだくだしいストーリー…
シャーリー・ジャクスン「山荘綺談」とリチャード・マシスン「地獄の家」(ハヤカワ文庫)をあわせて。ほぼ同日にまとめて読んだので。 どちらも幽霊屋敷ものホラーの古典。前者は1951年、後者は1972年の作。現在は、「山荘綺談」ではなく、「たたり」創元推…
アリゾナ州アバローニ市にサーカスが来たネ。ラーオ博士(老先生のほうがよろし)が団長ネ。サーカスにはメデューサがいるヨ、スフィンクスがいるヨ、キマイラに人魚がいるヨ。あそこではアポロニウスが占いをしているネ、今度死人を生き返らせるアルので、…
誰だったか、サーカスをテーマにしたファンタジーの傑作には、ブラッドベリ「何かが道をやってくる」、C・G・フィニー「ラーオ博士のサーカス」、それにこの「沈黙の声」があると言っていた。そのときにはサンリオSF文庫は絶版になっていたので、入手で…
トム・リーミーは1935年テキサス州生まれ。長じてファンジンを作っていたが、作家にはならず映画界で仕事をしていた。40代になって作家に転業。しかし1977年に心臓麻痺で死亡。実質的な活動期間は3年で、長編「沈黙の声」とこの短編集がほぼすべての作品。…
竹本健治「匣の中の失楽」にでてくる双子の愛称が、このホラーの主人公たちからとられていた。そのためにこの小説にはずっと興味があったにもかかわらず、1990年ころは品切れになっていた。最近、角川ホラー文庫で復刊された(といっても古本屋で買ったので…
「悪を呼ぶ少年」に続く第2作。1973年。 大手会社の広告担当重役ネッド・コンスタンチンは社長とけんかして退社し、ニューイングランド州コーンウォール・クームという村に1700年代初頭に建てられた家を見つけ、妻と娘の3人で移住する。 この村は極めて閉…
トマス・トライオン「悪魔の収穫祭 上」(角川文庫) - odd_hatchの読書ノート 村がどうなっているのか、というのが大問題なのだけれど、それは新参者のネッドには把握できない。なんとなれば、村人は彼に説明しないから。現在のとうもろこし王ジャスティン…
およそ20年ぶりに読んで、既視感を覚えたのは、「ほかの長編のモチーフをひとつにまとめた、なんて贅沢な小説なのだろう」ということ。もちろん順番は逆。これは1975年に出版された第2作(売れない時代に書いた別の長編があるのだけど。「バトルランナー」と…
駆け出しの小説家ベン・ミラーズは数十年ぶりに故郷の街に帰ってきた。それは二つの目的があり、ひとつは交通事故で死なせた妻の幻影を消すため、もうひとつは彼のオブセッションである幼児体験の正体を確かめるため。メイン州にあるセーラムズ・ロットとい…
人によると「モダンホラーは怖くない」そうだ。ミザリーもしかり。 「事故で動けなくなった作家を監禁し、自分だけのために小説を書かせようとする自称“ナンバーワンの愛読者”。ファン心理から生じる狂気を描くサイコ・スリラーの傑作」 http://www.bunshun.…
解説によると1930-40年代のパルプマガジンに書かれた黄禍論のパスティーシュとのこと。黄禍論の小説がこの国に紹介されるとはとても思わないので、専門の雑誌があったなど、この本を読まなければ知ることはあるまい。パルプマガジンは、ハードボイルドかSFか…
物語を推進する原動力は<隠れた貌>の暗躍であるが、その全貌を知り、未来を予見できるものは一人としていない。それゆえ、大枠は史実の通りに進み、226事件、真珠湾奇襲、ミッドウェー海戦、アリゾナの原爆実験、8月6日の広島投下までがそのとおりに記述さ…
地下鉄をもっぱらの仕事場とするスリのピカレスクノヴェル。1919年がアメリカの初出で、「新青年」で連載が開始されたのが1922年のこと。翻訳者は「新青年」の編集長を務めた人なので、確かなことなのだろう。 サムは下町の中年独身男。スリを本業としていて…
コネチカット州ニューイングランドの田舎で、女性大衆小説作家70歳の誕生パーティが開かれた。独身時代に書いた勧善懲悪の小説が売れに売れたという気難しい女性だ。パーティに来たのは、犬猿の仲の批評家に、出版代理人に、甥の二つの家族たち。金のない家…
古い家、といっても18世紀の終わりから19世紀の初頭に建てられたものが歴史あるものになるからアメリカの歴史はまだまだ浅いものといえる。そういう一家としてワイルダー家がある。ここには嫌な言い伝えがあって、この一家のものは失踪するのだ、それも不可…
この作家は、第1作「ワイルダー一家の失踪」(ハヤカワポケットミステリ)を読んでいた。都筑道夫によると「イギリス趣味のないカー」であって、たしかこの一家の主人(というか家長)が次々と不可解な状況で失踪していくという話であった。アメリカ南部あた…
「ビル・ハーディングは、現在C・J出版社の高級社員として社長の娘を妻に迎え、幸福な生活を送っていた。ところがある晩、偶然に前の妻、美人のアンジェリカに会った。この時からビルの生活には暗い影がさし、やがて生活は激変し、殺人事件にまきこまれて…
ベン・ジョンソンの古典喜劇「ヴォルポーニ」が下敷きになっている、のだそうだが、どうやら翻訳はない模様。 とりあえずサマリーを劇のように書くとだな。 序幕--ヴェニスに住む富豪が別々のところに住む3人に招待状を出す。死期が近づいてきたが、身寄りも…
まず周辺状況から。1981年にE.ホックが「密室大集合」というアンソロジーを編むときに作家・評論家などに、密室の代表長編をあげるようにというアンケートを行った。第1位はカーの「三つの棺」、これは順当だな、第2位は驚くべきことにこの作。なにしろ1944…
「奇術師の防止からウサギやハトが飛び出すように、完全密室の中から摩訶不思議な殺人事件が飛び出した! 煙がもうもうとたちこめる真っ暗な部屋の中で、各頂点にローソクが妖しくゆらめく五ぼう星形の模様のまんなかに、神秘哲学者セザール・サバット博士が…
「全米に五千万人の信者をもつ健康法の教祖様が、鍵のかかった部屋のなかで死んでいた。背中を撃たれ、それからパジャマを着せられたらしい。この風変わりな密室殺人をキリキリ舞いしながら捜査するのは、頭はあまりよくないが、正直者で強情な警部殿――!? ア…
ウィリアム・ヒョーツバーグ「ポーをめぐる殺人」(扶桑社文庫) 1923年のアメリカ「old good days」に起きたミステリー。探偵作家ドイルはオカルト好き、奇術師フーディニは合理主義という対比。
「1923年、繁栄と狂乱に沸くNYに、『モルグ街の殺人』がよみがえった。作品そのままの残虐な現場と、大猿の目撃 − だがそれは序曲にすぎなかった。『黒猫』が、『マリー・ロジェ』が、ポーの作品が悪夢の連続殺人となって次々に現実化していく。探偵役は、…
創元推理文庫に収録されたのは1975年ころと記憶している。末尾四分の一くらいが袋に覆われ、解説ともども読めないようになっていた。袋には、ここを開封しないで返品すれば代金を返しますと書かれている。結末命のエンターテインメントだからそうすることが…
1976年3月のハヤカワ文庫創刊の初出は、「そして誰もいなくなった」「幻の女」「ウィチャリー家の女」などの圧倒的なラインアップで、ポケミスを買えない自分はすぐに購入した。あいにく高校生で小遣いに不自由していたので、なかなか揃えられない。「あなた…
吸血鬼は人間の血を吸い、被害者を吸血鬼にすることによって種族を永らえている生物?である(とする)。吸血鬼同士は生殖できないということにしておこう。となると、吸血鬼という種が保存されるためには人間という宿主が必須である。このような種族増加の…
文庫になる前にポケミスを買って読んだ。最初の作は驚きだったなあ。たぶん、論理的な演繹の執拗さにだろう。論理に行き詰ったら、特殊例だけに絞ったり、別の補助線を外から導入したりするものだもの。ケメルマンのやりかたは神の言葉の意味を考える神学的…
価値のあるものは盗まない泥棒ニック・ヴェルヴェットの短編集第2巻。第1巻は、ハヤカワポケットミステリ初発のとき(1976か1977年)に購入して、面白く呼んだ記憶がある。空っぽの部屋から盗め、というような依頼の話が一番良く覚えているな。 個々の話がど…
この作者は、レギュラー登場人物の連作短編によって有名。これまでのところ怪盗ニック・ヴェルベットとサム・ホーソーンのシリーズしか紹介されていないので、このような評価というのは揺るがない状態になっている。追加するとなると、「長い墜落」(「密室…