odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

政治

堂目卓生「アダム・スミス」(中公新書)-2

2021/12/16 堂目卓生「アダム・スミス」(中公新書)-1 2008年の続き エントリーの2番目は「国富論」について。ここでスミスの経済学を詳述しても、現代の経済学のおさらいにはならない。それは別の新書や文庫でフォローしてもらおう。気になるところを箇条…

ジャン・ジャック・ルソー「社会契約論」(岩波文庫)-1

原著は1762年。今回は桑原武夫 / 前川貞次郎ほか訳の岩波文庫を読み直す。光文社古典新訳文庫で新訳も読める。ルソーの思想を解説した本はたくさんあるので、正確な読解にはそちらを参照されるように。 今回の再読ではアーレントの「革命について」を導…

ジャン・ジャック・ルソー「社会契約論」(岩波文庫)-2

2021/12/13 ジャン・ジャック・ルソー「社会契約論」(岩波文庫)-1 1762年の続き 半ばを読んでわかったのは、ルソーの民主制はギリシャやローマの政治をモデルにしていること。既存の絶対王政がドレイ状態をつくりだしているとき、それに対抗する政治のあり…

塩川伸明「民族とネイション」(岩波新書)-1

ヘイトスピーチや民族差別、人種差別の勉強をしていると、民族とナショナリズムがとても重要であると気付く。近代史を読む際に、民族とナショナリズムの視点をもつことで、意味や見え方ががらっと変わる。ファシズムやボリシェヴィズムの全体主義を考えると…

塩川伸明「民族とネイション」(岩波新書)-2

2021/11/19 塩川伸明「民族とネイション」(岩波新書)-1 2008年の続き 以後は20世紀後半。政治的軍事的な世界制覇をもくろむ全体主義はついえて、民族自決と自立が輝かしい理念になる。大帝国が崩れた後、植民地が独立する。その際に、帝国主義の宗主国が作…

マイケル・サンデル「公共哲学」(ちくま学芸文庫)-1

2005年に出した小論集。これだけ密度が高い内容では、サマリーを作るのも素人には難しい。幸いサンデルの薫陶を得た研究者が啓蒙書をだしているので、参考にするとよい。2019/07/19 小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-1 2010年2019/07/18 小林正…

マイケル・サンデル「公共哲学」(ちくま学芸文庫)-2

2021/11/05 マイケル・サンデル「公共哲学」(ちくま学芸文庫)-1 2005年 第2部は法律・政治における具体的な道徳を議論する。注目するのは、市場の道徳的な限界。市場が市民生活にかかわると市民道徳が堕落し、公共部門の品位を落とし、非市場の生活領域(…

マイケル・サンデル「公共哲学」(ちくま学芸文庫)-3

2021/11/05 マイケル・サンデル「公共哲学」(ちくま学芸文庫)-1 2005年2021/11/04 マイケル・サンデル「公共哲学」(ちくま学芸文庫)-2 2005年 リベラリズムのさまざまなタイプについてと、リベラリズムとその批判の対決について。 第3部 リベラリズム、…

杉本良男「ガンディー」(平凡社新書) 彼は非暴力的抵抗と殉教のイメージの人ではない。21世紀には評価が揺らいでいる。

マハトマ・ガーンディー「真の独立への道」(岩波文庫)1909年を読んだが、ガンディ(表記は揺らぎがあるが、ここでは本書の表記を採用)の考えはよくわからなかった。そこで、2018年にでた評伝を読む。 重視するのは、ガンディの思想のオリジナルを探すので…

米本昌平「バイオポリティクス」(中公新書)-1 人体改変や人体の資源化の技術をどう制御するかを検討する新しい考え方。

1990年代に完了したヒトゲノム解析、ES細胞などによって、人体の交配や臓器提供などが実現できる見通しができた。しかしこれは人間の人体観・死生観に大きな影響を及ぼす。一方で、企業は商用化に向けて研究を加速し、南北や国内の経済格差はマイノリティや…

米本昌平「バイオポリティクス」(中公新書)-2 人体のパーツが商品化されて、グローバルな経済圏を作っていることと経済格差を原因とする人体棄損が起きている。

2021/10/29 米本昌平「バイオポリティクス」(中公新書)-1 2006年の続き 後半はより政治に近い問題になる。人体のパーツが商品化されて(輸血や角膜移植などで古くから使われていた)、グローバルな経済圏を作っていることと経済格差を原因とする人体棄損が…

本田由紀「軋む社会」(双風舎、河出文庫) 平成不況のあと教育-仕事-家庭の循環関係が空洞化し、エゴイズムが支配。働かせ方の変化に原因がある。

著者のTwitterは2017年ころからフォローしている。主に教育に関して、鋭い批判的意見を表明しているので。 社会のどこが「軋」んでいるかというと、昭和のころまでには教育-仕事-家庭の循環関係があってそれなりに機能していたが、平成不況のあと循環関…

橋本努「経済倫理 あなたは、なに主義?」(講談社選書メチエ) 経済倫理のイデオロギー8つを比較検討。著者の作った48の質問に答えて、政治的自由度と経済的自由度の評点を作ろう。

自分の主義主張を言語化して、一貫した形式(イデオロギー)にしてみよう。首尾が一貫していると他人への説得力が増す。とはいえ、イデオロギーは環境に規定されていて、考えるたびに変化する。首尾一貫そのものには価値がないので注意。判断や是非をつけら…

北山俊哉/真渕勝/久米郁男「はじめて出会う政治学 -- フリー・ライダーを超えて 新版」(有斐閣アルマ)-1 大学の新入生向けテキスト。前半は政治と経済と社会について。

大学の新入生向けテキスト。高校までの覚える授業から考える講義になるにあたって、大学生が自発的・積極的に政治をみられるようにする。そのために卑近な日常のできごとがイントロになり、そのあとに考える枠組みを提示するという仕掛けになっている。もと…

北山俊哉/真渕勝/久米郁男「はじめて出会う政治学 -- フリー・ライダーを超えて 新版」(有斐閣アルマ)-2 大学の新入生向けテキスト。後半は政治のしくみと世界とのかかわりについて。

2020/11/05 北山俊哉/真渕勝/久米郁男「はじめて出会う政治学 -- フリー・ライダーを超えて 新版」(有斐閣アルマ)-1 2003年の続き 2020年にこれを読むと腹が立つねえ。20年前(手持ちの「新版」は2003年改訂)の著者が能天気におもえるのと、現実の政治が…

加茂利男/大西仁/石田徹/伊藤恭彦「現代政治学 新版」(有斐閣アルマ)-1 2012年版。できるだけ新しい版で読むことを推奨。

初版が1998年で、新版が2003年。改定が繰り返され、最新版は2012年の第4版。章立てはほぼ同じ(一部差し換え)だが、事例が変わったと思う。できるだけ新しい版で読むことを推奨。 はじめに―政治学との「出会い」序 章 政治学のアイデンティティー ・・・ 政…

加茂利男/大西仁/石田徹/伊藤恭彦「現代政治学 新版」(有斐閣アルマ)-2 2012年版。この国の政治があまりにだめで、本書は現実の分析というよりユートピアの紹介のよう。

2020/11/2 加茂利男/大西仁/石田徹/伊藤恭彦「現代政治学 新版」(有斐閣アルマ)-1 2003年の続き 20世紀に政治の中心にあると考えられている立法、行政(司法)の分析。前のエントリーでもいったように2010年代のこの国に政治があまりにダメになっていて、…

川崎修/杉田敦編「現代政治理論(新版)」(有斐閣アルマ)-1 大学の政治学ではリベラルデモクラシーが教えられるが、日本の実生活ではリベラルデモクラシーは少数派。

北山俊哉/真渕勝/久米郁男「はじめて出会う政治学 -- フリー・ライダーを超えて 新版」(有斐閣アルマ)、加茂利男/大西仁/石田徹/伊藤恭彦「現代政治学 新版」(有斐閣アルマ)を読んだので、さらにその先を勉強。 第1章 政治--権力と公共性 ・・・ 政治…

川崎修/杉田敦編「現代政治理論(新版)」(有斐閣アルマ)-2 ナショナリズム、フェミニズム、公共性、環境問題、グローバル化などの新しい政治問題と理論を紹介。

2020/10/29 川崎修/杉田敦編「現代政治理論(新版)」(有斐閣アルマ)-1 2012年 自分が学生だった1980年前後を思い出すと、おそらく政治学の教科書にはマルクスとウェーバーにページが割かれていたのではないか。第7章以降は章そのものがなかったので…

藤田弘夫/西原和久編「権力から読みとく現代人の社会学・入門(増補版)」(有斐閣アルマ)-1 社会学のおもなテーマは「権力とは何か」。どこにでもある権力を分析。

社会学の大学教養課程の参考書を読む。社会学のおもなテーマは「権力とは何か」だそうで、さまざまな権力の分析をまとめている。本書は1996年初版で、2000年に増補版が出た。読んだのは増補版。 第I部 人間に潜む権力第1章 権力と社会=藤田弘夫 ・…

藤田弘夫/西原和久編「権力から読みとく現代人の社会学・入門(増補版)」(有斐閣アルマ)-2 メディア、教育、民族と宗教等に見られる権力と差別について。

2020/10/26 藤田弘夫/西原和久編「権力から読みとく現代人の社会学・入門(増補版)」(有斐閣アルマ)-1 2000年の続き 大学の参考書であれば、講義内容と合わせてもっと詳しいメモを取るべきであろうが、学生ではないのでエッセンスだけにした。勉強してい…

伊藤真「憲法問題」(PHP新書) 憲法は国家を縛るルールであり、天皇・国務大臣・裁判官・公務員に憲法尊重と擁護義務を負わせている。国務大臣が改憲案を発議すること自体が憲法違反である。

世の中にはそれを聞いていると吐き気がするほど不快なことがいくつかある。ひとつはヘイトスピーチ。在特会などのレイシストの街宣やデモのネット中継を見ていて、彼らの発するヘイトスピーチに気持ちが悪くなったことはなんどもある(これはマジョリティだ…

樋口陽一「リベラル・デモクラシーの現在」(岩波新書) リベラルデモクラシーは公共社会の構成原理で身分制からの解放思想。

憲法学の泰斗による講演を編集加筆したもの。リベラルデモクラシーは公共社会の構成原理。でもリベラルの権利からの自由(議会制)と、デモクラシーの人民による意思(民主主義)は相いれないところがあるが、身分制からの解放思想ということで両立させる原…

渡辺靖編「現代アメリカ」(有斐閣)-1 20世紀以降のアメリカの政治と経済と社会・文化。

現代のアメリカ(と20世紀の歴史)をさまざまな切り口で説明する。歴史、政治、思想、経済、文化など。初出が2010年。初の黒人大統領バラク・オバマが就任した翌年。久しぶりの民主党の大統領なので、論調は民主主義や共和主義が復活するかどうかとい…

渡辺靖編「現代アメリカ」(有斐閣)-2 本書と同じ問題設定で「現代ニッポン」をレポートしたら、きわめてお寒い内容になりそう。

2020/10/15 渡辺靖編「現代アメリカ」(有斐閣)-1 2010年の続き 後半になると、取り上げられた問題は、まさにいま起きていることになる。本書でも、サマリーでも、20世紀までのことしか書いていないが、それぞれの問題はいまのできごととしてメディアやSN…

有賀夏紀「アメリカの20世紀 上」(中公新書) 19世紀の共和主義が20世紀初頭に革新主義になり、半ばには世界システムの覇者を目指す。

アーレント「革命について」でアメリカ革命(独立戦争)を知ったが、その後のできごとを知らないので、この本を読んで勉強。前史ののちはだいたい10年ごとに時代を区切る。西暦は恣意的な指標だが、人間や社会の変化とほぼ同期しているという驚き(これは20…

有賀夏紀「アメリカの20世紀 下」(中公新書) WW2以後。世界システムの覇権国が戦争介入と不況で没落していく。

2020/10/12 有賀夏紀「アメリカの20世紀 上」(中公新書) 2002年の続き 下巻はWW2の後をまとめる。自分のライフタイムに重なる時代になるので、これまで通史を読んでいなかった。なので新鮮。 第6章 冷戦下の「黄金時代」 ・・・ 1945年から1960年。WW2終…

梶田孝道「統合と分裂のヨーロッパ」(岩波新書)-1 1993年現在のようす。西は統合に向かい、東は統合の枠組みがなくなり民族国家に分裂する。

欧州連合の成立を目前に控えたヨーロッパ。国・民族単位で社会を見るやりかたができなくなるできごとであって、現状と行く末を注視する。初出は1993年。それからおよそ30年がたった2020年の視点で当時を読み直す。民族を考えるときに、ホームランドをもつ民…

梶田孝道「統合と分裂のヨーロッパ」(岩波新書)-2 1993年現在のようす。多文化主義と移民受入れ。極右と排外主義の台頭。

2020/10/08 梶田孝道「統合と分裂のヨーロッパ」(岩波新書)-1 1993年の続き 後半は、ホームランドをもたない外国人である移民や難民。EUにアイデンティティをもつのは、ヨーロッパの文化や言語などと同質性を持つ人には抵抗がないが、域外から移民難民は必…

三島憲一「現代ドイツ 統一後の知的軌跡」(岩波新書)-1 1989年から15年の振り返り。東独統一のきしみ、国民と移民の確執、極右の台頭。

思えば、1989年のベルリンの壁崩壊と東西ドイツ統一(本書によると「併合」)からあとのドイツを知らない。そこで本書を参考にする。2006年初出なので、直近15年がもれてしまうが、しかたがない。 重要なできごとは上に加えると、ユーゴ内戦、イラク戦争。EU…