odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

共産趣味

安東仁兵衛「日本共産党私記」(文春文庫)

1928年に生まれた著者が1948年に東大に入学するとともに、共産党細胞として活動を開始。その後、1961年に離党するまで反主流派であり続けた著者の立ち居地を明らかにする。年齢からすると、戦前に共産党ないし無産者活動を開始した人たち(野間宏とか埴谷雄…

和田春樹「歴史としての社会主義」(岩波新書)

1989年の東欧革命、1990年のソ連邦崩壊を受けて、20世紀の社会主義運動と国家成立を概観する。記述は19世紀初頭のユートピア社会主義から1990年まで。地域もヨーロッパ、ロシアにとどまらず、東欧・中欧、東アジア、東南アジアと広域にわたる。社会主義の思…

ウィリアム・モリス「ユートピアだより」(岩波文庫)

188X年、社会主義者の会合で疲れて帰宅した「私」は夢を見た。それは200年後の社会で、共産主義社会が実現していた。その話をぜひ書けとすすめられたので、ここにまとめてみた。というわけで、19世紀の詩人で工芸家ウィリアム・モリスの構想したユートピアが…

ジュール・ヴァレース「パリ・コミューン」(中央公論社)-2

2014/11/19 ジュール・ヴァレース「パリ・コミューン」(中央公論社)-1 後半の150ページが1871年の「パリ・コミューン」のドキュメント。小説を見る前に、このできごとをまとめておこう。 遡ると1789年のフランス革命まで行ってしまうが、そこまで行くのは…

ジュール・ヴァレース「パリ・コミューン」(中央公論社)-1

そういえば19世紀後半のフランスを知らないなあ、大仏次郎の「パリ燃ゆ」も読んでいねえなあ、ということでタイトル買いした一冊。1965年初版の中央公論社版「世界の文学」の第25巻。その後、この小説は復刻された様子がないので、読むにはこの本を入手しな…

柄谷行人「マルクス その可能性の中心」(講談社文庫)

タイトルの論文は1974年に雑誌連載。そのあと改訂されて1978年に単行本化。自分の初読の1980年代半ばには「差異」「テキスト」「貨幣と言語」というのは人気のあるタームになっていて珍しくもなかったが、雑誌初出のころを考えると先進性がすさまじい。なに…

吉本隆明「マルクス」(光文社文庫)

1964年に出版されたものを2006年に文庫化。著者は1924年生まれなので、40歳のときのものか。 マルクス紀行1964 ・・・ マルクスの思想は、3つのカテゴリがあってそれぞれが連関している。ひとつは、現実的なものとしての<自然>哲学。エピクロスから始まる…

カール・マルクス「ルイ・ボナパルトのブリュメール十八日」(岩波文庫)

1848年2月のフランス革命から51年12月のルイ・ナポレオンのクーデターまでをレポート。この時代、マルクスはパリの現場を見ているわけではない(4月上旬にケルンに移動。翌年のドレスドン蜂起のあとプロイセン政府の追放令がでて、フランスにもドイツにもベ…

廣松渉「マルクスと歴史の現実」(平凡社ライブラリ)

マルクスとエンゲルスは共産主義社会がどのようなものかについてを詳述していない。初期の「共産党宣言」あたりには萌芽になるような記述があったが、のちに商品と貨幣と資本を研究するうちにそのあたりの記述はなくなった。そういうしだいなので、著者は手…

桜井哲夫「社会主義の終焉」(講談社学術文庫)

「一九九一年に消滅したソ連は、マルクス・レーニン主義の名の下に、マルクスの思想とはかけ離れた全体主義国家として存在した。著者は、十九世紀のサン=シモン主義に遡り、産業化をめざしつつ前衛党による大衆支配へと変質した社会主義の変遷を跡づける。さ…

アニー・クリジェル「ユーロコミュニズム」(岩波新書)

1970年代のコミュニズムを思い出すと、ひとつは既存の共産主義国家、政党、労働組合のどうしようもなさが明確になっていたこと(ソ連と中国の争いとか、ソ連の反抗知識人への迫害とか、東欧諸国からの亡命とか)、もうひとつはそれに対抗する新左翼のより強…

メルル/ブノアメシャン他「カストロのモンカダ襲撃・エジプト革命」(筑摩書房)

20世紀の革命というと、ロシアと中国とベトナムであとは・・・という程度の認識。それを補完するのがこの本になる。舞台はキューバにエジプトにガーナ。これらの特徴は、a.いわゆる第三世界、発展途上国、「後進国」と呼ばれる地域。b.植民地の経験を持ち開…

チェ・ゲバラ「モーターサイクルダイアリーズ」(角川文庫)

ゲバラの著作は不定期に読んでいて、これが4冊目(「革命戦争の日々」集英社文庫、「ゲバラ日記」角川文庫、「ゲリラ戦」中公文庫に続く)。この本は、若いときの「成人旅行」の記録。医師を目指していたゲバラは、独り立ちの前に、友人といっしょに南米の…

猪木正道「共産主義の系譜」(角川文庫)

1949年初版。マルクス、フォイエルバッハ、ラッサール、スターリンの4人を収録。10年後に、レーニンとトロツキーを加えて増刷。1969年に、チトー、アジアの共産主義、スターリンとフレシチョフを加える。1984年に角川文庫に収録されたときに、ローザ・ルクセ…

毛沢東「実践論・矛盾論」(岩波文庫)

初読時のメモを書いておく。1981年のときのもの。 実践論 ・・・ 実践を通じて真理を発見し、また実践を通じて真理を立証し、真理を発見させる。最初は主観的世界にあるが、実践を通じて感性的認識にいたり、それが理性的認識につながり、革命的実践を通…

レフ・トロツキー「文学と革命 下」(岩波文庫)

下巻はロシア革命以前の亡命時代に、主にドイツの雑誌に書いた小文を集めている。1900年前後のドイツには総合雑誌のようなものがたくさんあって、文化の傾向を主導する役割を果たしていた。そういう雑誌に小文を書くことで名を馳せたジャーナリストがいたの…

レフ・トロツキー「文学と革命 上」(岩波文庫)

この本には、ロシア革命以後に書いた文学関係の論文が収められている。トロツキーには、政治煽動家、軍事指導者として名の残っている人なのだが、亡命後には著述家としての一面も持っている。「裏切られた革命」「ロシア革命史」「わが生涯」などの多数の本…

フリードリヒ・エンゲルス「ドイツ農民戦争」(岩波文庫)

「エンゲルスの著作。1850年に『新ライン新聞・政治経済評論』第5・6合併号に掲載したもの。ドイツの三月革命(1848〜49)の敗北から2年間にわたる革命運動の沈滞した状況下にあって、大農民戦争(1524〜25)の時期に力強く闘ったドイツ農民の姿を描いて労働…

フリードリヒ・エンゲルス「反デューリング論 下」(岩波文庫)

上巻を読んでから1年ほど放置。一気にまとめて読んだ。 この本は「社会主義」を勉強する際の教科書といわれてきたのであるが、それは過去の話。上巻の感想でもあるように、1870年代の自然科学分野をほぼ網羅しているので、当時としては画期的な本であった。…

フリードリヒ・エンゲルス「反デューリング論 上」(岩波文庫)

この歴史的書物に関しては、生半可なことしかいえないので、本質とは全然無関係の駄弁を連ねることにする。 感心したひとつは、著者エンゲルスが類まれな知識の持ち主であって、たんに経済学と歴史の専門家であるばかりでなく、化学、物理学、生物学、数学な…

カール・マルクス/フリードリヒ・エンゲルス「共産党宣言・共産主義の原理」(講談社文庫)

マルクスにアソシエーショナリズムの考えがあると読んだことがあるのだが、岩波文庫版「共産党宣言」を見返したときにはそんな記述はみつからなかった。こちらの講談社文庫版で読み直すと、それらしきものがあった。II章「プロレタリアと共産主義者たち」…

カール・マルクス/フリードリヒ・エンゲルス「ドイツ・イデオロギー」(岩波文庫)

いくつか。 ・マルクスの有名な言葉に「宗教は阿片である」というのがあるが、いまだに原文に遭遇しない(『ヘーゲル法哲学批判序論』にあるとのこと)。このドイデで宗教に触れていたところを見ると、マルクスは宗教全般を完全否定したのではなくて、国家が…

立花隆「日本共産党の研究 3」(講談社文庫)

さて最終部。1933年から34年にかけて。重要なことは、 ・スパイMに指導された共産党幹部と全協幹部の大規模な逮捕があって、非常時共産党はほぼ壊滅した。 ・残された宮本、袴田、大泉、小畑ら数名が幹部となって再建したが、袴田の指摘により宮本といっしょ…

立花隆「日本共産党の研究 2」(講談社文庫)

引き続き、1930年から1932年までを記述。この間の情勢で重要なことは、 ・コミンテルンの方針により、「天皇制打倒」が主スローガンになったこと。共産党の主張のみならず、傘下の労働組合にも綱領に掲げるように要請した。その結果は、労働組合が治安維持法…

立花隆「日本共産党の研究 1」(講談社文庫)

戦前の共産党の実態はどうだったか。その成立のいきさつ、コミンテルンによる支配、資金の出所、組織、相次ぐ転向者など──戦時下の弾圧による党崩壊までの激動の歴史を実証的に追い、当時の関係者の証言を記録する。理論や主張としてではなく、生きた人間研…