2012-01-01から1年間の記事一覧
東京中央線の立川と国分寺の間あたりに、多摩由良という町がある。そこは1970年代初頭から巨大な団地がつくられ、少し高級なものだから、雇いの警備員を配置している。それが滝沢一家。元刑事の父に、兄の警備員、主人公の紅子(コーコと愛称)。つるん…
1987年初出の短編集。恐怖小説と探偵小説が同じくらいの量で収録されている。 夢しるべ ・・・ 妻と別れて別の女をかこっている男が、間男をしている夢を見る。覚めると、その女から鍵を返せと電話、喫茶店で待つ女は妻の顔で、声は女で、いや声も妻で・・・…
能登半島の先にある通称「髑髏島」にそれぞれ知り合いではない数名の男女が集められた。その日から起こる猟奇的な連続殺人事件! コードネーム「髑髏」が暗躍、彼らは生き延びれるか?島を脱出できるのか? ・・・というような話は、マイケル・スレイド「髑…
メゾン多摩由良に入っている不動産会社のオフィスで死体を発見。早速、警備会社社員が確認にいくと、死体は消えている。続いて駐車場で死体発見の報が到着。すわ(死語)、ということで現場に向かうとまたもや死体が消えている。コーコから事件を聞いたタミ…
コーコシリーズの長編第4作。 天才少女の満智留ちゃんが古本屋を覘いていたら、クラスメイトの寺沢くんに声をかけられ、文庫本ほどの大きさのものを渡され、なにかあったら「アブドラに行け」という。気になった満智留ちゃん、今谷少年探偵団に相談すること…
滝沢紅子シリーズの長編5つめになるのかな。1990年初出。 前作「前後不覚殺人事件」はコーコが不在だった理由はいずれ語るという幕切れだったが、その理由を説明する長編。普段の多摩由良町を離れ、お春と一緒に東北・遠野にでかける。父が気にしている事件…
作者によるとホテル・ディックという職業は日本にはなかったらしい。アメリカだとたとえば「チャイナ・オレンジの謎」1934年に登場するくらいにポピュラーなものらしい(この作では脇役として名前が挙がるだけで、仕事の中身は触れられない)。1980年代にな…
ホテル・ディックシリーズ第2弾。1987年初出。 舞台がホテルから出ないというのに恐れ入った。主な会話は6階の警備室、事件の報告で社長室が現れるくらいで、あとはロビーにラウンジに正面玄関付近に裏の駐車場、それから下記のショッピングエリアの店の中…
ホテル・ディックシリーズ第三弾。唯一の長編で最終作。 「刑事上がりのおれは、現在、浅草の高層ホテル『ハイライズ下町』の夜間警備責任者。アメリカ流に呼べば、ホテル探偵(ディック)ということになる。ある夕方、警備室に奇妙な電話がかかってきた。今…
都筑道夫の作品は映像化されているものがそれなりにあって、長編で映画化されたのは「なめくじに聞いてみろ」「三重露出」「紙の罠」など。TVドラマではなめくじ長屋あたり。ときにはオリジナル脚本を提供して「100発100中」「黄金の眼」になったり、TVドラ…
1977-78年に連載された映画時評。タイトルは、締め切り直前の土曜の深夜でないと映画を見る時間をねん出できないから、というもの。もちろん当時の流行った「サタデー・ナイト・フィーバー」のもじり。週刊誌の連載なので、古い映画は取り上げない。これから…
作者の経歴とこの本の出版年を知ることは重要。プラハ生まれでウィーン大学で教授を務める。ナチス政権誕生と同時にスイスに亡命。この本は1932年に出版。 自分が読むのに困難を覚えたのは、どうやらカント哲学を基礎としているらしいこと(当為とか自由律と…
著者のやりたいことのひとつである「日本とは何か」を、多くの人のインタビューやレポートで考察したもの。武道家、成田闘争参加者、ストリップ劇場小屋主、宗教家その他のさまざまな職種の人が登場する。もともとは個別に雑誌に発表されたものであって、本…
3つの近代の漂流譚が収録。まれに古本屋でみかけることがあるが、非常に入手しにくいだろう。 孫太郎ボルネオ物語 ・・・ 1764年。ミンダナオ島に漂着。以後、ボルネオ、ジャワ、スマトラを経由して帰国。7年ぶり。光太夫ロシア物語―第一編・第二編― ・・・…
山田方谷は備中松山藩(現岡山県高梁市)の人。江戸末の百姓生まれであったが、幼少のころより聡明であったので、朱子学に勤しむ。長じては大阪の塾に留学し、陽明学(大塩平八郎、吉田松陰などが有名)を学ぶ。折から、藩財政が悪化していたことに加え、藩…
最初に読んだのは中学1年生のとき。「国盗り物語」の大河ドラマを欠かさず見ているときに、「国盗り物語」「の原作を読み、これほど面白い小説があるのかと図書館にいって、同じ著者のこの小説を借りてきたのだった。(自慢することにしよう。それから1年を…
以下は不正確なまとめになるだろう。 ストーリーは大政奉還と江戸城の開城から始まる。幕府は潰れた、ではどうするか。新政府に力がないのは明白。しかも人民(そんな階級の人はいなかったが)も信用していない。そこで、早急に新政府の「中心」を作らなけれ…
初出は1887年。もはや原文を読むことはかなわない。そこで桑原武夫による現代語訳でよむ(とはいえ「メートルがあがる」なんていう昭和20年代の流行り言葉がでてくるので、「現代」と呼ぶにはちょっと。「メートルがあがる」の意味がわかる人はすくなくなった…
「今から百年前,アジアで最初の国会開設要求の国民運動が日本全国からわきおこった.一八八一年は,この自由民権運動の最高潮の時であり,民衆憲法草案が続々起草され,自由党が結成され,専制政府は崩壊の危機にまで追いつめられた.各地で進められている…
そう簡単には入手できない一冊。自分の手元にあるのは昭和15年初版のもの。新規開店した古本屋にいったらこれが300円で売られていた。1990年ころの話。数年を経ずしてつぶれてしまった。 内容を例によってまとめてみるが、今回は超訳をところどころで採用。 …
1905年5月25日の日本海海戦のことは、ノビコフ・プリボイ「ツシマ」によってロシア側のことを知ることができるとはいえ、この国の多くの人は司馬遼太郎「坂の上の雲」で知ることになるだろう。ここには、1968年ころの連載中、まだ存命中だった日本海海戦経験…
1933年に発表され、同年にスターリン賞を受賞した小説。この国には1930年代に翻訳され、現在でも原題「ツシマ」のタイトルで上下2巻で販売されているらしい。自分が読んだのは、「バルチック艦隊の潰滅」というタイトルの一冊本。なにしろ9ポか10ポの細か…
文字から炎が湧き上がるかのような熱い文章。1913年生まれ。学生時代の1932年にマルクス主義と出会い、圧倒的な体験になった。その後、高校の教師になるが戦前・戦中は時局批判の活動ができない。戦後、その体験から現代史を講義するとともに、政治批判を活…
「あの」戦争について書かれた本は多岐にのぼる。小学生のころに手にした太平洋戦記を皮切りに多くの本を読んできた。最近の問題意識は、「あの」戦争の個々の局面における決断や戦局推移にではなく、どうすれば「あの」戦争を回避することができたのか、ど…
書かれたのは1981年。レーガンがアメリカ大統領になり、新たな冷戦の開始を意図した。共産圏の周辺国家に核兵器を配備しようとして、反核運動をおこす原因になった。日本には核兵器を配備することはできなかったが、大幅な防衛費の負担増加を求めた。そのた…
旧聞だけど、 笑っちゃうけどクール…人形と踊るマイケル・ジャクソンのダンス(動画):らばQ という記事があって、 www.youtube.comの動画がすごい、ってことになっている。 カナダに「Christopher」という芸人がいて、20年も前から同じネタをやってるんだぜ…
だいたい3つの区分で旧日本軍の行った残虐行為を紹介し、その背景を分析する。その際に、国民党軍や八路軍の戦略、政略も検討対象にする。そのことは、残虐行為の背景を理解する助けになる。 いつものように著者の主張をまとめよう。 ・1931年の柳条湖事件…
1982年のベストセラー。百万部を超えたらしい。このような陰惨なノンフィクションを受け入れる土壌があったことを懐かしく思い出す。レーガン政権になって核戦争の可能性が増したと思われた時代だったこと、それから医療行政の不手際が目立つことあたりがそ…
学生時代に読んでいて書架に眠っていたものを再読。岡本喜八監督による同名映画をみたのが最近(2006年現在)だったので興味を持ったから。著者名は手元にある古い角川文庫版によるが、あとがきによると実際の著述は半藤一利氏。最近、文春文庫で復刊されたほ…
無声映画を上演する時、日本では弁士という特別の形態があった。どうやら西洋ではオーケストラあるいは小型楽隊が場面に合わせて演奏しているのを聴いていた。それはあたかもバレエを見ているようなものだ。ところが日本では小さな楽隊に合わせて、弁士が場…