odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

フィリップ・K・ディック「ザ・ベスト・オブ・P・K・ディック III」(サンリオSF文庫)「ゴールデン・マン」「ヤンシーにならえ」「小さな黒い箱」「融通のきかない機械」

マーク・ハースト編、『 The Golden Man (1980) 』 の邦訳。二分冊の第一巻。 「はじめに」 Foreword /マーク・ハースト 「まえがき」 Introduction ・・・ 記載からすると「暗闇のスキャナー」と「ヴァリス」の間に書かれた。散漫な内容ではあるが、気にな…

フィリップ・K・ディック「ザ・ベスト・オブ・P・K・ディック IV」(サンリオSF文庫)「マスターの最期」「CM地獄」「まだ人間じゃない」

マーク・ハースト編、『 The Golden Man (1980) 』 の邦訳。二分冊の第二巻。 「フヌールとの戦い」 The War with the Fnools 1969.02 ・・・ 間抜けな侵略者。身長二フィートで全員同じ格好と姿。でも、人類はずっとしてやられて、絶滅寸前。最前線ではうん…

フィリップ・K・ディック「ウォー・ゲーム」(朝日ソノラマ文庫)「ハンギング・ストレンジャー」「根気のよい蛙」「展示品」世界も自分も信用ならないものになるという恐怖。

PKD

「顔のない博物館 (1983) 」北宋社のうち3編を入れ替えた文庫本。のちに同じタイトルでちくま文庫から短編集がでていて、「ウォー・ゲーム」「ドアの向うで」「萎びたリンゴ」が重複。 2018/09/18 フィリップ・K・ディック「ウォー・ゲーム」(ちくま文庫)…

フィリップ・K・ディック「悪夢機械」(新潮文庫)「訪問者」 「超能力世界」「少数報告」

PKD

1987年に訳者の朝倉久志が編集した短編集。それまでにでていた8冊の短編集と重複しない作品を選んだという。 「訪問者」 Planet for Transients 1953.10-11 ・・・ 核戦争から300年。地球は放射能に汚染され、ミュータントが生きている。地下に逃れた人間の…

フィリップ・K・ディック「模造記憶」(新潮文庫)「この卑しい地上に」「ぶざまなオルフェウス」「追憶売ります」

PKD

1989年に訳者の朝倉久志が編集した短編集。それまでにでていた8冊の短編集と重複しない作品を選んだという。 「想起装置」 Recall Mechanism 1959.07 ・・・ 戦災救済課という役人が精神分析医に相談。高いところから落ちる夢を見て怖いと思う。トラウマのせ…

フィリップ・K・ディック「人間狩り」(ちくま文庫)「ナニー」「火星探査班」  代表作を網羅した初心者向け短編集。

PKD

早くからPKDを紹介してきた仁賀克雄さんが編集したPKDの短編集(1991年初出)。過去に訳出した短編集(「顔のない博物館」北宋社と「人間狩り」集英社 ワールドSFシリーズと「ウォー・ゲーム」朝日ソノラマ文庫から選択し、初紹介作品を一つ追加した。前二冊…

フィリップ・K・ディック「ウォー・ゲーム」(ちくま文庫)「ジョンの世界」「パットへの贈り物」テーマは非人間とのコミュニケーションの不全。

PKD

早くからPKDを紹介してきた仁賀克雄さんが編集したPKDの短編集(1992年9月初出)。「ウォーゲーム」(朝日ソノラマ文庫)とは別に編集された短編集。「ウォー・ゲーム」「ドアの向うで」「萎びたリンゴ」が重複。 2018/09/25 フィリップ・K・ディック「ウォ…

フィリップ・K・ディック「ウォー・ベテラン」(現代教養文庫)「髑髏」「トニーとかぶと虫」戦争と差別煽動の危機を描いたものを集めた短編集。

PKD

早くからPKDを紹介してきた仁賀克雄さんが編集したPKDの短編集(1992年12月初出)。「人間狩り」「ウォー・ゲーム」と続いた三冊目。これで編集はいったん区切りをつけるとのこと。収録短編はすべて本邦初訳。 「髑髏」 The Skull 1952 ・・・ 22世紀。ハン…

フィリップ・K・ディック「永久戦争」(新潮文庫)「地球防衛軍」「変数人間」 PKDの戦争はどこか奇妙。

PKD

1993年に訳者の朝倉久志が編集した短編集。それまでにでていた8冊の短編集と重複しない作品を選んだという。新潮文庫のPKD短編集はこの三冊で打ち止め。 「地球防衛軍」 The Defenders 1953.01 ・・・ 米ソ間の冷戦は8年前に全面戦争になった。核兵器が使わ…

フィリップ・K・ディック「宇宙の操り人形」(朝日ソノラマ文庫/ちくま文庫)

PKD

これからPKDの長編のレビューをするが、配列はポール・ウィリアムズ編「フィリップ・K・ディックの世界」(ペヨトル工房)の長編作品一覧に基づくことにした。すなわち、PKDの長編には死後出版されたものがあり、出版年と執筆順は一致しない。この「フィリッ…

フィリップ・K・ディック「偶然世界」(ハヤカワ文庫)

PKD

「偶然世界(太陽パズル)」。1954年12月13日SMLA受理、1955年出版。PKDの出版された第一長編。すでに大量の短編を書いていて、その実績をもとにエースブックスから2長編を一冊にまとめたペーパーバックスとして出版された、のでよかったかな(このあたりの…

フィリップ・K・ディック「ジョーンズの世界」(創元推理文庫)

PKD

PKDの長編は複数の主人公がいて、それぞれが物語をもっている。ここでもそう。なので、ストーリーに沿ったまとめにはしないで、主人公たちに注目するようにして。 大状況は、他惑星への移住や冒険宇宙船が飛んでいるころ(ただし社会のしくみや生活は1950年…

フィリップ・K・ディック「虚空の眼」(サンリオSF文庫)-1

1959年10月2日、カリフォルニアに建造された陽子ビーム偏向装置が、始動初日、暴走事故を起こした。居あわせた八人の男女は、陽子にさらされ、高みから投げ出される。サンリオSF文庫には登場人物票がないので、自分が補足。 ジャック・ハミルトン: ミサイ…

フィリップ・K・ディック「虚空の眼」(サンリオSF文庫)-2

2018/09/07 フィリップ・K・ディック「虚空の眼」(サンリオSF文庫)-1 1957年 多元宇宙とか平行世界などで語られることが多いようだが、そこは素通りすることにして。 陽子ビーム偏向装置の放出したエネルギーで吹き飛ばされた先の世界。読者の物理現実や執…

フィリップ・K・ディック「いたずらの問題」(創元推理文庫)

PKD

20世紀半ばの「浪費の時代」は1980年代の戦争によって終わった。廃墟のなかからストレイターズ大佐の主導する道徳再生運動(モラル・レクラメーション:略称モレク)が起こり、以後世界はこの運動下に再編成される。人々は集合団地ごとのブロックにまとめら…

フィリップ・K・ディック「小さな場所で大騒ぎ」(晶文社)

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まず前史に当たる話はこうだ。東海岸で勉学中のヴァージニアはナンパにあってロジャーという青年と懇意になる。彼は素朴な機械工。うだつをあげようとロスアンジェルスに行こうとする。というのは、ラジオの修理ができ、テレビが爆発的に普及するからチャン…