odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

イサベル・アジェンデ「精霊たちの家」(国書刊行会) 資産家トゥルエバ一族のほぼ四代にわたる家族の肖像。軍事政権・不況から脱出する未来ないし希望というのはこの「女性的なるもの」の豊穣さにこそある。

ガルシア=マルケス「百年の孤独」を読んだ(1990/6/18)半年後に、この本を購入しておきながら十数年放置してしまった。今世紀初頭にチリの荒野に入植してきた家族に起こる様々な出来事の奔流にのることができず、ほんの数ページで数年分が記述される圧縮さ…

イサベル・アジェンデ「精霊たちの家」(国書刊行会)-2

2017/06/30 イサベル・アジェンデ「精霊たちの家」(国書刊行会) 1982年 の続き 十年ぶりに再読(2017年1月)。以前は登場人物表しかつくらなかったので、今回はメモを取りながら、章ごとのサマリーをつくった。 小説は、三人称で説明される部分で大枠ので…

イサベル・アジェンデ「精霊たちの家」(国書刊行会)-3

2017/06/30 イサベル・アジェンデ「精霊たちの家」(国書刊行会) 1982年 2017/06/29 イサベル・アジェンデ「精霊たちの家」(国書刊行会)-2 1982年 の続き 第2世代(クラーラたち)の物語。旧来の大農場経営がうまくいっている一方で、首都は近代化される…

イサベル・アジェンデ「精霊たちの家」(国書刊行会)-4

2017/06/30 イサベル・アジェンデ「精霊たちの家」(国書刊行会) 1982年 2017/06/29 イサベル・アジェンデ「精霊たちの家」(国書刊行会)-2 1982年 2017/06/28 イサベル・アジェンデ「精霊たちの家」(国書刊行会)-3 1982年 の続き 物語は第3・第4世代…

イサベル・アジェンデ「精霊たちの家」(国書刊行会)-5

2017/06/30 イサベル・アジェンデ「精霊たちの家」(国書刊行会) 1982年 2017/06/29 イサベル・アジェンデ「精霊たちの家」(国書刊行会)-2 1982年 2017/06/28 イサベル・アジェンデ「精霊たちの家」(国書刊行会)-3 1982年 2017/06/27 イサベル・アジェ…

マルティン・ハイデッガー「形而上学入門」(平凡社ライブラリ)-1 存在を問うときに、民族が出てくることの奇妙さ。

たしかに哲学に熱中した一時期があって、そのときにこの「形而上学入門」を読んだ。そのときの線引きが今でも残っていて、読んで興奮した記憶を思い出せる。でも、それから四半世紀を超えて、今では「存在」という厄介な問題は、科学の「素朴実在論」でいい…

マルティン・ハイデッガー「形而上学入門」(平凡社ライブラリ)-2「シュピーゲル対談」 ナチス時代の政治運動で完全に敗北して打ちのめされて、政治的発言をしなくなった哲学者の姿

2017/06/23 マルティン・ハイデッガー「形而上学入門」(平凡社ライブラリ)-1 1935年の続き ハイデガーは、1933年4月21日にフライブルグ大学の総長に就任。5月1日に同僚とともにナチスに入党。5月27日就任演説でナチスを礼賛したように取れる文言があった(…

開高健 INDEX

2017/06/20 開高健「過去と未来の国々」(光文社文庫) 1961年 2017/06/19 開高健「声の狩人」(光文社文庫) 1962年 2013/12/25 開高健「ずばり東京」(光文社文庫) 2013/08/01 小田実/開高健「世界カタコト辞典」(文春文庫) 2012/08/25 開高健「渚から来…

開高健「過去と未来の国々」(光文社文庫) 冷戦時代に鉄のカーテンの向こう(中国と東欧)を見聞してきたルポ。

1960年春に日本の作家が中国に招かれる。この本によると参加者は、野間宏団長、竹内好(か実)、松岡洋子、西園寺公一、大江健三郎、開高健。ほかにもいたかもしれないが、名前は出てこない。正式な国交はないので、入国にしてかの国の事情を知るのが極めて…

開高健「声の狩人」(光文社文庫) 冷戦時代の外国ルポ。アイヒマン裁判を傍聴しサルトルにインタビュー。

1959-1961年にかけて、著者は外国旅行を精力的に行っていた。ヨーロッパと東欧、ソ連、中国に限られるが。そのときの体験を雑誌「世界」に連載。その後手を加えて1962年に岩波新書に入れた。これは光文社文庫の復刻版。 一族再会 ・・・ 建国10数年目のイス…

開高健「私の釣魚大全」(文春文庫) 創作の苦しみから逃れる釣りの楽しみ。「スランプ中の手慰みで文体が未発酵」なんだそうだが、そうみえない。

1964-65年にかけてベトナムに行き、その経験を蒸留して長編小説に仕上げる算段であった。「渚から来るもの」は書けたが満足いかず、「輝ける闇」を書こうにも書けない。自宅の書斎やホテルで悶々としているなか、ある雑誌から魅力的な提案を受ける。各地の釣…

開高健「紙の中の戦争」(岩波同時代ライブラリ)

1965年と1968年にベトナムに行き、戦争を体験してきた著者が紙に書かれた戦争を渉猟して、作品と作家を見るというもの。この時期に、著者は「輝かしい闇」「夏の闇」など自分の戦争体験を文学化するのに四苦八苦、苦慮していた。 深沢七郎「笛吹川」の場合 …

開高健「フィッシュ・オン」(新潮文庫) 日本の釣りは「やらずぶったくり」。人やあとのことを考えず、自分の利益と満足を満たすことばかりする。

1969-70年にかけて、作家がカメラマン秋元啓一といっしょに世界をめぐって釣りをした記録(文庫のカバーデザインは柳原良平なので、作家の知己が集まっている)。週刊朝日に連載されてのちに単行本にまとめられた。 1968年に西ドイツの釣具店でルアーを教え…

開高健「白いページ I」(角川文庫) 動詞をタイトルにした随筆。体験の最重要なところは最初の一瞥にあり、混沌を書くために作家は量の言葉を動員する。

1971-72年に雑誌に連載されたエッセイ。1975年に単行本化。 飲む ・・・ うまい水について。都市ないし国のある種のレベルを測る指標となる。食べる ・・・ うまいもの。とれたての松葉ガニの肉。路上で食べる中華がゆ。東南アジアの焼き飯。続・食べる ・・…

開高健「白いページ II」(角川文庫) 大変な読書家で物知りであり、世界の隅々まで出かけて見聞が広いのであるけど、ここが大事であるという核になるものは空虚な感じ。

1973-1975年に雑誌に連載されたエッセイ。1975年に単行本化。ほかの未収録文を集めた「白いページ III」があるそうだが、これは未入手。 遠望する ・・・ ミュンヘンオリンピック(1972年)のイスラエル選手団へのテロ事件。その後の推移をピタリと予測。…

開高健「オーパ」(集英社文庫) 1978年のブラジル大名釣り旅行。

ブラジルがこの国の人々に注目を浴びるようになったのは、バブル時代に多くのブラジル人が出稼ぎに来たことと、スポーツの活躍(1990年代半ばに日本人格闘家がブラジル人格闘家に惨敗したのと、1996年アトランタオリンピックで日本のサッカーチームがブラジ…

開高健「もっと遠く! 上下」(文春文庫) アメリカ大陸縦断大名旅行。戦後生まれの団塊世代は戦争の知識を持たない。

1979年作家48歳。右手のしびれ、肩の疼痛に悩み自分をポンコツと言いながら、アメリカ大陸を縦断して各地で釣りをする。総計九か月に及ぶ旅。「もっと遠く!」は北アメリカ大陸編。アラスカ―カナダ―USAをめぐる。相棒は出版社が指名した若者にカメラマン。作…

開高健「もっと広く! 上下」(文春文庫) アメリカ大陸縦断大名旅行。貧困者や差別者は目を凝らさないと日本人には見えてこない。

「もっと広く!」はラテン・アメリカ編。1979-81年ではこの用語は人口に膾炙していなかったと見える。自分もそうで、この言葉を知るのはガルシア=マルケスやボルヘスなどを読むようになった80年代後半。なので、メキシコがこちらにはいっている。無理やりこ…

開高健「食卓は笑う」(新潮社) 東西南北を問わず食卓の座談は必須、ジョークを披露し座を盛り上げなければならない。

戦後の海外映画を見る楽しみの一つが、レストランの食事場面。着飾った紳士淑女がワインやシャンペンのグラスを取り、銀のフォークやナイフで大きな皿にきれいに並べられた肉や魚を食べ、バターをパンにつける。こういう西洋の上流階級の食事の風景は、この…

開高健「オーパ アラスカ編」(集英社文庫) 広告代理店丸抱えの釣り行脚。

北南アメリカ縦断の釣旅行は、すばらしい成果をあげた。「もっと遠く」「もっと広く」にまとめられたエッセイと写真は大きめの版で印刷され、高額ではあってもよく売れた。そのとき作家は50歳。体力にいくつか問題を抱えていても、気力は充実していた。とは…

開高健「生物としての静物」(集英社文庫) 書斎とアウトドアで精選し、使い込み、壊し、修理し、繰り返し購入して、ほとんど身体そのものになった〈もの〉を紹介。

タイトルは「いきものとしてのせいぶつ」と読む。著者が書斎とアウトドアで精選し、使い込み、壊し、修理し、繰り返し購入して、ほとんど身体そのものになった<もの>をメーカーやブランド、商品名といっしょに紹介する。ものはほとんど身体であり、各所に…