odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

清水弟「フランスの憂鬱」(岩波新書) ミッテラン政権(1981-1995)まで長期政権になったフランスの1980年代。

ミッテラン政権(1981-1995)まで長期政権になったフランスの1980年代をみる。この10年間は、国家主導型経済に対する自由主義のバックラッシュがあり、民営化や規制緩和が進んだ。ではフランスはどうだったか。ヤーギン/スタニスロー「市場対国家 上下」(日…

郡司泰史「シラクのフランス」(岩波新書) 1995年のシラク政権。EU統合とユーロの使用開始。エリート主義の行政とデモで対抗する市民。極右の台頭。

清水弟「フランスの憂鬱」(岩波新書)の続き。1995年にシラクが大統領になってからのおよそ10年。 ミッテランの社会党政権末期には汚職が横行していて議員や大臣にもあったのがわかった。またミッテランの14年の統治に飽きがあった。そこで、ドゴール派のシ…

アガサ・クリスティ INDEX

2020/09/24 早川書房編集部「アガサ・クリスティ読本」(早川書房)-12020/09/22 早川書房編集部「アガサ・クリスティ読本」(早川書房)-22020/09/21 早川書房編集部「アガサ・クリスティ読本」(早川書房)-32012/03/16 アガサ・クリスティ「スタイルズ荘の怪…

早川書房編集部「アガサ・クリスティ読本」(早川書房)-1 40代になってからベストセラー作家になったクリスティの評論集。

1978年12月。通常だと、クリスマスにクリスティの新作が発売されるが(英語圏)、1976年に亡くなったのでもう新作はない(「カーテン」「スリーピング・マーダー」は発売済)。そこで、書肆は追悼の評論集を出した。 クリスティ、人と作品簡潔さの女王(エド…

早川書房編集部「アガサ・クリスティ読本」(早川書房)-2 英国の評論は具体的で事実に即して論理的に書かれる。そう簡単には哲学や形而上学を持ち込まない。安心して読める。

2020/09/24 早川書房編集部「アガサ・クリスティ読本」(早川書房)-1の続き 評論ノスタルジーの王国(コリン・ワトソン) ・・・ 1920年代のイギリスの庶民は貸本屋で本を借りて読んでいた(いわれてみれば! ペーパーバックが出て本が消耗品になったのはWW2…

早川書房編集部「アガサ・クリスティ読本」(早川書房)-3 戯曲「検察側の証人」。ビリー・ワイルダーの映画との違いを楽しみましょう。

2020/09/24 早川書房編集部「アガサ・クリスティ読本」(早川書房)-12020/09/22 早川書房編集部「アガサ・クリスティ読本」(早川書房)-2 の続き 物語作者としての魅力(小林信彦、石川喬司、稲葉明雄、小鷹信光) ・・・ 1972年「世界ミステリー全集 第1巻…

アガサ・クリスティ「ゴルフ場の殺人」(創元推理文庫) 探偵小説の枠組みにロマンスと冒険小説のスパイスの加わった「意外な犯人」もの。探偵のことを書きすぎたので、このあとは探偵主観でない書き方に工夫しないといけなくなる。

講談社文庫(絶版)とハヤカワ文庫が「ゴルフ場殺人事件」、創元推理文庫が「ゴルフ場の殺人」。著者の長編第3作だが、ひとつまえが「秘密機関」というエスピオナージュなので、本格推理としては2作品目(1923年初出)。この小説からこの国の「新本格」の書…

アガサ・クリスティ「ポアロの事件簿 1」(創元推理文庫) 短編探偵小説黄金時代をなぞった初期短編集。このフォーマットだとクリスティは生彩に欠ける。

ポアロの、クリスティの初期短編。1924年に「Poirot Investigates」のタイトルで出版。創元推理文庫版はオリジナルのアンソロジーより収録は少ないようだ。ポアロとヘイスティングスがあったばかりで、同居生活を始めたばかり。ポアロのあとをヘイスティング…

アガサ・クリスティ「ポアロの事件簿 2」(創元推理文庫) WW1後にイギリス上流階級は没落しているのにその自覚がない。

ポアロの、クリスティの初期短編。1923-30年にかけて書かれたもので、1974年に出版された「Poirot's Early Cases」に基づく。「戦勝舞踏会事件」が短編デビュー作。 創元推理文庫の「ポアロの事件簿 1,2」はハヤカワ文庫の「ポアロ登場」と「教会で死んだ…

アガサ・クリスティ「アクロイド殺人事件」(新潮文庫)-2 「メイントリック」にフォーカスするより、張り巡らした伏線を回収する手際に驚こう。女性が訳すと詮索好きでおしゃべりな老嬢がかわいらしい。

村の未亡人が自殺した。一年前に夫を毒殺したといううわさがたてられていて、ようやくそれも消えようというころ。その翌日、村の財産家ロジャー・アクロイド氏が夜分になにものかに刺殺された。ロジャーの家にはその夜、たくさんの訪問者がいて、下がってい…

アガサ・クリスティ「ブルートレイン殺人事件」(新潮文庫)「青列車の秘密」とも ストレスで乗り気のしない仕事でも契約を履行するために完成させるというプロ意識はさすが。

アメリカの富豪ヴァン・オールディン氏は娘の結婚に不満だった。夫がいい加減な遊び人で金をせびってばかりなのに、別の女(ダンサー)にうつつを抜かしている。離婚しろといいだすと、娘は娘でフランスの侯爵に入れあげていた。「ハート・オブ・ファイア」…

アガサ・クリスティ「おしどり探偵」(ハヤカワ文庫)「二人で探偵を」とも 日本では知られていないイギリスの名探偵の真似をするトミーとタペンスの会話と冒険を楽しもう。

ハヤカワ文庫のタイトルは「おしどり探偵」、創元推理文庫は「二人で探偵を」。 【今日の一冊】本日(11月22日)は「いい夫婦の日」です。『おしどり探偵』好奇心旺盛な妻・タペンスとやさしい夫・トミー。夫婦はひょんなことから国際探偵事務所を開設。素人…

アガサ・クリスティ「ミス・マープル最初の事件」(創元推理文庫)「牧師館の殺人」とも 女性作家が男性のジェンダーにたって手記を書くの奇妙だけど、不思議に思わないのはなぜ?

原題「The Murder at the Vicarage」1930年はハヤカワ文庫で「牧師館の殺人」、新潮文庫で「牧師館殺人事件」、創元推理文庫で「ミス・マープル最初の事件」。ミス・マープルの長編初登場は本作だが、そのまえに「ミス・マープルと13の謎」に収録された短…

アガサ・クリスティ「シタフォードの秘密」(ハヤカワ文庫) 霊能者による殺人予告通りに事件が起こるが、クリスティは「冬の夜の団欒」の一言でスルー。トリックよりも小説の技術に驚かされる優秀作。

ハヤカワ文庫は「シタフォードの秘密」で、創元推理文庫は「シタフォードの謎」。違いはないです。 なるほど19世紀末からオカルトが流行り、大衆に広く膾炙した。帝政ロシアのラスプーチンなどをいう怪僧が政権に口を出すくらいになり、ブラヴァツキー夫人と…

アガサ・クリスティ「ミス・マープルと13の謎」(創元推理文庫) イギリスの田舎町の中産階級は夜の娯楽がないので、定期的に集まってはゴシップなどに話をさかす。村から出たことがない無学者がもっとも知恵者であるという趣向。

作家レイモンド・ウェストの家には、警視総監、女性画家、弁護士、牧師が毎週火曜に集まる。一人しか結末を知らない話をして謎解きをする。いつも真相を当てるのは、セント・メアリー・ミード村から一歩も出たことのない老婦人ミス・マープル! 関係なさそう…

アガサ・クリスティ「エンド・ハウス殺人事件」(新潮文庫)「邪悪の家」とも ヘイスティングスをポワロを崇拝する一回り下の世代にした二人の関係の見直しをする翻訳がおもしろい。

原題「Peril at End House」を新潮文庫はこのように名付け、創元推理文庫は「エンド・ハウスの怪事件」、ハヤカワ文庫は「邪悪の家」とする。1932年初出の長編第12作。 イギリスの南海岸で休暇中のポワロとヘイスティングスは、3日に3度殺されかけたという若…

アガサ・クリスティ「晩餐会の13人」(創元推理文庫)「エッジウェア卿の死」とも アメリカの天真爛漫な野蛮を前にヨーロッパは委縮するので、ポワロは老いたヨーロッパを保護する。

創元推理文庫では「晩餐会の13人」で、ハヤカワ文庫では「エッジウェア卿の死」、新潮文庫では「エッジウェア卿殺人事件」。イギリス版とアメリカ版でタイトルが異なっていて(クリスティにはよくある)、翻訳者の判断でこのようになったらしい。書誌情報…