odd_hatchの読書ノート

エントリーは3400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2025/9/26

川崎修「ハンナ・アレント」(講談社学術文庫)-6 アメリカの自由を制度化する憲法体制と蓄積された富は20世紀に全体主義国家になることから免れた。21世紀はどうなる?

2025/04/22 川崎修「ハンナ・アレント」(講談社学術文庫)-5 全体主義は市民権を得た者を法体系から改めて追放する運動体(藤田省三) 2014年の続き

 

 さて前回も難解だった後半を読む。「革命について」「人間の条件」などを読む。とりあえず、前回の感想。ほとんど何も言っていないに等しい。
2021/11/30 川崎修「ハンナ・アレント」(講談社学術文庫)-3 2014年
2021/11/29 川崎修「ハンナ・アレント」(講談社学術文庫)-4 2014年
 で、今回の再読も玉砕。優れたことを言っているはずなのに、アレントの主張を輪郭すら捕えることができなかった。デイヴィッド・ミラー「はじめての政治哲学」(岩波現代文庫) 2003年が政治哲学の教科書なのに、アレントにかぎらずアドルノハーバーマスロールズなどの20世紀の政治哲学の巨人を一切扱っていないことに驚いた。その理由が彼ら彼女らはひとり一派の教祖(グルとルビがふってあった)であって、伝統的な政治哲学とは違った考えをしているからとの由。その指摘を思い出すと、本書の第4章「政治の復権を目指して」で解説されるアレントの用語は彼女独自の意味が付されていて、教科書の知識をベースにすると意味がずれている。解説のような研究者による要約を読んでも、アレントの考えはよくわからない。
仲正昌樹「今こそアーレントを読み直す」講談社現代新書が同じ本を読んだ解説だが、こちらは「わかる」。でも本書を読んでから、これを思い出すと、仲正著はアレントの考えから救済を見出そうとして、複雑で難解なところを省いたせいだろう。)


 というわけで、以下は自分用メモ。
・20世紀前半は全体主義運動で、後半はアメリカ。ヨーロッパ陣がアメリカをみるとき、夢と悪夢を投影しがちで、アレントもそう。なので「革命について」はアメリカ擁護であり批判。
アメリカの特長は自由を制度化する憲法体制と蓄積された富にある。後者は憲法大勢と矛盾しむしばむ(物的生活の解放は政治的自由の制度化と矛盾する:仕事の不自由を他人との活動で解消しようという行為が、なんでも商品化される資本主義では金で他人にやらせることができるからだな)。
有賀夏紀「アメリカの20世紀 上」(中公新書)
有賀夏紀「アメリカの20世紀 下」(中公新書)
渡辺靖編「現代アメリカ」(有斐閣)-1
渡辺靖編「現代アメリカ」(有斐閣)-2
リチャード・ロービア「マッカーシズム」(岩波文庫)
藤原帰一「デモクラシーの帝国」(岩波新書)
渡辺靖「アメリカン・デモクラシーの逆説」(岩波新書)
アメリカはできた時から大衆社会で階級制がない(ただし黒人奴隷制と非白人差別は棚に上げている)。大衆は画一性によって成り立つので、社会の外に逃れられない。アメリカの大衆社会全体主義化する事から免れてきた少ない国の一つだが、21世紀の白人ナショナリズムはトランプという象徴をえて、全体主義化する傾向があるんだよなあ。
渡辺靖「白人ナショナリズム」(中公新書
 という具合に具体的な運動や政治を見るときは、アレントの考えは同意不同意にかかわらずわかる。でも政治哲学の原理論になるとお手上げ。
・活動(activity)は人対人の行為で、言語・象徴を媒介とし、複数の人間の間にある(世代を超えて記憶されないので、記録することは大事)。人対物の行為である製作とは別物。でも、プラトンからマルクスまでも西洋の政治哲学は政治を製作し、仕事のモデルで理解しようとしてきた。ソクラテスからして複数性を拒否し、観照を重視する製作の政治哲学だった。
・それに対する活動の政治哲学では、真理の専制の排除・意見の復権・公的領域の保持・複数性の喜びでないといけない。

 

 

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