odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2017-05-01から1ヶ月間の記事一覧

開高健「風に訊け」(集英社文庫) マチズモやセクシズムやミソジニーが散見する人生の達人の若者よろず相談。

週刊プレイボーイは1966年の創刊以来、自分のみたところ、都会の男子高校生と田舎から出てきた男性大学生をターゲットにして、「大人」にするための指南書として機能してきた。ときに政治を話題にすることがあっても(2015年夏の安保法制でなんどか特集を組…

開高健「オーパ アラスカ至上編」(集英社文庫) この作家、富豪の関心を引いて、信じられないほどの厚遇を得られる名人でもある。

前回(オーパ アラスカ編で、たぶん1984年)の翌年1985年に、アラスカ再訪。目的はキング・サーモンとブラックバスのトロフィーサイズ。場所を変えてレッドサーモン。これらの魚がわれわれの食卓に上るとき、サイズはフライパンに入る程度で、このサイズが最…

開高健「オーパ モンゴル編」(集英社文庫) 1989年に肺がんと肺炎で58歳の若さで急逝した作家のほとんど最後の仕事。

「オーパ」シリーズは「世界の名だたる淡水魚(それも肉食魚)をルアーで釣る」というコンセプトで、世界各地に出かけるシリーズ。それより前の「私の釣魚大全」「フィッシュ・オン」から「もっと遠く」「もっと広く」も含めてほとんど世界の大陸を制覇して…

宮島喬「ヨーロッパ市民の誕生」(岩波新書) 差別撤廃からシティズンシップ(市民権)の実現へ。国民国家から分権化、文化的多元化、超国家コミュニティの創出へ。

クシシトフ・ポミアン「ヨーロッパとは何か」(平凡社ライブラリ)の記述は1970年代で終了。本書(2004年初出)の主題は、前掲書の記述が終わった後のヨーロッパを、とくにシティズンシップからみようというもの。 シティズンシップの考えの背景にはロック「…

海野福寿「韓国併合」(岩波新書)

教科書では「日韓併合」と称される事象をここでは「韓国併合」とする。以下の事態進行中では「韓国併合」が普通の表記であったから。同時に、日韓が対等であると思わせるような表現にしたくないという意思も込められる。実際、下記のような歴史的事実をみる…

高崎宗司「植民地朝鮮の日本人」(岩波新書)

1876年の日朝修好条規締結から1948年の引き上げ完了までの、在朝日本人の軌跡をまとめる。統計資料や政治文書も使用するが、生身の人間のふるまいを描くために、多くの人の回想録を使用する。できごとや政策を知るには物足りなき術だが、日本人がどのように…

吉見義明「従軍慰安婦」(岩波新書)

1945-70年にかけてのこの国の文学や映画には従軍慰安婦が登場することがあった。野間宏「真空地帯」、大岡昇平「俘虜記」、野村芳太郎「拝啓天皇陛下様」、岡本喜八「独立愚連隊、西へ」「肉弾」「血と砂」などが思いつく。慰安婦の実態を知らないでいたので…

小林英夫「日本軍政下のアジア」(岩波新書)

1931-1945年の「アジア太平洋戦争」のおもに非戦闘地や期間における軍政の被害状況をまとめる。戦闘期における日本軍の残虐行為はよく知られているが、非戦闘期になると情報が少ない。軍人、民間人が現地人を暴力的差別的に扱ったというのが断片的に書かれる…

文京洙「韓国現代史」(岩波新書)

この本は高崎宗司「植民地朝鮮の日本」(岩波新書)の続きとして読む。 朝鮮戦争の結果、朝鮮半島は南北に分断され、それぞれが別の統治形態を持つことになった。この本ではおもに大韓民国の歴史の変遷をみる(北の朝鮮についていえば、1950年代に金日成が反…

田中宏「在日外国人(新版)」(岩波新書)

この国の戦後史を読むときに、ほぼ無視されるのが、オールドカマーと呼ばれる旧植民地出身者およびその係累に起きたこと、そしてニューカマーと呼ばれる戦後の在留外国人のこと。とりわけ前者には差別が日常であり、法も彼らを保護せず、なにしろ政府そのも…

高木健一「今なぜ戦後補償か」(講談社現代新書) 強制移住や収容などに補償する西洋と強制労働や性奴隷などに補償しない日本。

20世紀の15年戦争は、周辺諸国および交戦国に多大な被害を及ぼしたわけだが、この国にいると1952年のサンフランシスコ条約で全部清算されたと考える。しかし、1990年以降に韓国、中国、台湾の戦争被害者が日本や現地の日本法人を相手に補償を請求する裁判が…

安田浩一「ネットと愛国」(講談社) 21世紀ゼロ年代に登場したヘイト団体「在特会」とネトウヨのレポ。

在特会のデモや街宣の映像は異様で不気味。ときに暴力を辞さない(しかし暴力行為にでるのは多対小になっているときだけ。人数が少ない時には挑発するがそこまで)。なぜ在特会は人数を広げ、路上で目立つようになったか。差別や排外主義の街宣やデモに人は…

部落解放2013年11月号「「在特会」とヘイトスピーチ」(解放出版社)

人種差別扇動運動とその対抗活動の転換点だとおもう2013年上半期。この時期に起きたことと何が考えられていたかの参考になる特集記事。おもに路上で起きていることについて。法整備や裁判などは触れられていないので、別書を参照してください。 奴らを通すな…

法学セミナー2015年7月号「ヘイトスピーチ/ヘイトクライム 」(日本評論社)

「ヘイトスピーチ/ヘイトクライム 」の現状をしるために雑誌を購入。特集の中心は、2009年におきた在特会による京都朝鮮学校襲撃事件に対する最高裁判決。当然この国のヘイトスピーチ、ヘイトクライムはこれだけではなく、日々起きている。実際に起きている…

法学セミナー2016年5月号「ヘイトスピーチ/ヘイトクライム II」(日本評論社)

2016年春の国会で、ヘイトスピーチ規制法の審議が始まったことを受けて、ヘイトスピーチ(以下HS)の法規制の在り方について検討する。 ヘイトスピーチ規制消極説の再検討(奈須祐治) ・・・ HS規制法消極説は、1)表現の自由の侵害(でもHSの表現の価値は…

師岡康子「ヘイト・スピーチとは何か」(岩波新書)

「ヘイト・スピーチ」が流行語になったのは2013年。「在日特権(そんなものはない)を許さない市民の会」が全国各地でデモや街宣を行い、いくつか刑事事件を起こしてから。ヘイトスピーチに対する抗議活動もできるようになり、法整備が必要という認識も生ま…

笠井潔/野間易通「3.11後の叛乱 反原連・しばき隊・SEALDs」(集英社新書)-1 21世紀の社会運動に関与してきた人たちが、2011.3.11以後の変化を語り合う。

2015年12月から半年かけて二人の間で交わされた交換エッセー。21世紀の社会運動に関与してきた人たちが、2011.3.11以後の変化を語り合う。もとは集英社のwebで公開されていたのを完結後に一冊にまとめた。一時期は全文がWebにあったが、現在公開されているの…

笠井潔/野間易通「3.11後の叛乱 反原連・しばき隊・SEALDs」(集英社新書)-2 2013年2月に呼びかけがあって同年9月に解散した「レイスストをしばき隊」。反レイシズム運動は実務集団で、結集するが団結しない。

2017/05/09 笠井潔/野間易通「3.11後の叛乱 反原連・しばき隊・SEALDs」(集英社新書)-1 2016年の続き。 2013年2月に呼びかけがあって同年9月に解散した「レイスストをしばき隊」。「しばき」という語感に惑わされてか(意図的な誤解か)、「しばき隊…

ヴァン・ダイン INDEX

2017/05/01 ヴァン・ダイン「ベンスン殺人事件」(創元推理文庫) 1926年 2017/04/28 ヴァン・ダイン「カナリア殺人事件」(創元推理文庫) 1927年 2017/04/27 ヴァン・ダイン「グリーン家殺人事件」(創元推理文庫) 1928年 2011/03/06 ヴァン・ダイン「僧…

ヴァン・ダイン「ベンスン殺人事件」(創元推理文庫) ファイロ・ヴァンスはアメリカ知識人が夢見た理想的教養市民

株の仲買人で道楽者のアルヴィン・ベンスンが自室で射殺された。ソファでくつろいでいるところを正面から。道楽者で金に汚い被害者は人に恨まれていた。とくに、愛人にしている歌手(メトロポリタンオペラで歌った後独立)とそのフィアンセの大尉、道楽仲間…