odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ドストエフスキー INDEX

2020/02/28 フョードル・ドストエフスキー「貧しき人々」(河出書房)-1 1846年2020/02/27 フョードル・ドストエフスキー「貧しき人々」(河出書房)-2 1846年2020/02/25 フョードル・ドストエフスキー「分身(二重人格)」(河出書房) 1846年2020/02/24 フ…

フョードル・ドストエフスキー「貧しき人々」(河出書房)-1 40代の老人男性と10代の少女の手紙が交互に交わされるという、18世紀風の古い形式の小説。

これから米川正夫個人訳のドストエーフスキイ全集を読んでいく。 中学3年の冬、高校受験の直前に同じ訳者の「罪と罰」(新潮文庫)を買って、受験勉強をほったらかしにして一月ほどかけて読んだ(目標にしていた高校に入学)。そのときに、この作家の小説を…

フョードル・ドストエフスキー「貧しき人々」(河出書房)-2 40代の老人男性マカールは、利他主義をよそおいながら、実際のところは自分のことしか考えていない。他者を目的ではなく手段にしている。

対するマカールでは下宿の同居人ブルシコフの存在に目をひかれる。マカールと同じ小官吏。彼は上司の不正か何か巻き込まれて訴追されていた。それは彼を意気消沈させるものであったが、勝訴し、職場の信頼も復活する。パーティの席で興奮して疲れて休んでい…

フョードル・ドストエフスキー「分身(二重人格)」(河出書房)

タイトルは「ドッペルゲンガー」を意味するロシア語だそうなので、米川正夫の「分身」のほうがあっている。岩波文庫のタイトルの「二重人格」は読者を混乱させるな。今なら「ドッペルゲンガー」で通じると思う(オカルト系ではこの現象の人気がなくなってい…

フョードル・ドストエフスキー「プロハルチン氏」「主婦」「ポルズンコフ」(河出書房) デビュー後の中短編。試行錯誤中。

以下は河出書房新社版全集第1巻に収録された中短編。 プロハルチン氏 1846 ・・・ 安下宿に長年寄宿している下級役人のプロハルチン氏。けちで他人を寄せ付けない偏屈な男。それがある晩姿を消し、体調を崩して帰ってきた。譫妄状態になり、ついに死亡する…

フョードル・ドストエフスキー「弱い心」「人妻と寝台の下の夫」「正直な泥棒」「クリスマスと結婚式」(河出書房) 1848年に発表された中短編。ファルスに徹してどたばたを演じきったところにおもしろさや新しさを感じる。

以下は河出書房新社版全集第2巻に収録された中短編。1848年に発表されたもの。 弱い心 1848 ・・・ 長年ルームシェア(という言葉は出てこないけど)しているアルカージィとヴァーシャの青年下級官吏。大晦日の晩にご機嫌で帰ってきたヴァーシャを問いつめ…

フョードル・ドストエフスキー「白夜」(河出書房)-1 孤独な生活ができてしまう都市の巨大空間に住む「空想家」が勝手に盛り上がって、勝手にしゅんとなってしまった

ペテルブルグにきて8年目、26歳になった「わたし」。友達がいないので、町をうろつくことしかできず、ずっとなにか考え事(空想)をしている。今日もうつうつとしていて、一人ぼっちで世の中から見捨てられている感じ。この自閉的な行動性向は素質によるのか…

フョードル・ドストエフスキー「白夜」(河出書房)-2 複数ある米川正夫訳の異同について堀田善衛に教えられたこと

2020/02/20 フョードル・ドストエフスキー「白夜」(河出書房)-1 1848年 さて、この「白夜」の米川正夫訳は戦前から読まれてきた翻訳だ。 河出書房版全集の月報で、堀田善衛が「白夜」の思い出を書いている。少年のときに、この短編を、とりわけその冒頭を…

フョードル・ドストエフスキー「ネートチカ・ネズヴァーノヴァ」(河出書房)

つねに自分が苦労するように選択し、自分が貧乏になるように行動してしまう女性「ネートチカ・ネズヴァーノヴァ」の告白(1849年)。まとめのために、原作にはない「第〇部」をつける。 第一部。夫と死別した母が再婚したのは、オーケストラのバイオリン弾き…

フョードル・ドストエフスキー「初恋(小英雄)」「伯父様の夢(河出書房)

ペトラシェフスキー事件のあとに発表された作品を読む。ざっと8年のブランクのあとの作品。すでにドスト氏は30代半ば。 初恋(小英雄) 1857 ・・・ ペトラシェフスキー事件以前に書かれたが、事件のために発表は1857年と遅れた。兄が原稿を保管していて、…

フョードル・ドストエフスキー「スチェパンチコヴォ村とその住人」(河出書房)

ペトラシェフスキー事件のあとの長編。 大学を卒業してからのらくらしている「わたし」におじから帰宅せよと連絡が入る。叔父(30代後半)の経営しているスチェパンチコヴォ村がしっちゃかめっちゃかになっているという。もともとこの土地は伯爵が経営してい…

フョードル・ドストエフスキー「死の家の記録」(河出書房)-1 収容所体験者はしゃべることで心的なストレスから解放される。

新進作家として順調な創作を行ってきたが、ペトラシェフスキーの主宰する空想社会主義サークルに参加していたために、28歳の1849年に逮捕。1854年までシベリアで服役し(流刑になるまでの経緯は重要かつ劇的であるがここでは省略)、軍隊に勤務する。1858年…

フョードル・ドストエフスキー「死の家の記録」(河出書房)-2 囚人は自由を渇望する。不自由よりも耐え難いのは、強制的な集団生活。

2020/02/10 フョードル・ドストエフスキー「死の家の記録」(河出書房)-1 1860年 書き手の「わたし(アレクサンドル・ペトローヴィチ)」は貴族として入獄する。彼は、監獄で初めて民衆と出会ったと述懐するのであるが、彼の観察はそれほどでもない。すなわ…

フョードル・ドストエフスキー「死の家の記録」(河出書房)-3 ある一線を超える行為をした犯罪者はその先を進むしかない。

2020/02/10 フョードル・ドストエフスキー「死の家の記録」(河出書房)-1 1860年2020/02/07 フョードル・ドストエフスキー「死の家の記録」(河出書房)-2 1860年 監獄には、信心深いもの、せこいもの、他人のいいなりになるもの、強いものに取り入ろうとす…

フョードル・ドストエフスキー「虐げられし人々」(河出書房)-1 いくつかの三角関係があらわにするエゴイズムが関係者を虐げ辱める。

同じ人物が複数の名前で呼ばれるので、ネットにある登場人物表を印刷して手元に置いておくとよい。 新進作家のヴァーニャ(米川正夫訳)は知り合いのナターシャを好きだったが、ナターシャは公爵の息子アレクセイ・ペトロヴィッチを強く愛していた。このアリ…

フョードル・ドストエフスキー「虐げられし人々」(河出書房)-2 ネルリのありかたはワルコフスキー公爵の信条と表裏一体。互いの信条を裏返しにしたのが相手であり、ふたりは鏡像関係にある。

2020/02/04 フョードル・ドストエフスキー「虐げられし人々」(河出書房)-1 1861年 このような三角関係の物語と同時進行するのが、貧しい娘ネルリ(米川正夫訳)の薄幸な生涯。 新進作家の「わたし」はペテルブルグで犬を連れた老人が物乞いをし、ある朝、…