odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

フョードル・ドストエフスキー「虐げられし人々」(河出書房)-3 語り手の「わたし」が書けない時に起きた事件の数々の記憶を反芻することによって、小説を書こうとする意欲を取り戻すまでを書いたのがこの小説。

2020/02/04 フョードル・ドストエフスキー「虐げられし人々」(河出書房)-1 1861年2020/02/03 フョードル・ドストエフスキー「虐げられし人々」(河出書房)-2 1861年 1861年に書かれた小説。1859年「スチェパンチコヴォ村とその住人」「伯父様の夢」、1860…

フョードル・ドストエフスキー「いやな話」「夏象冬記」「鰐」(河出書房) 「虐げられし人々」1861年と「罪と罰」1866年の間に書かれた短編。ドストエフスキー40代前半の作品。

「虐げられし人々」1861年と「罪と罰」1866年の間に書かれた短編。ドストエフスキー40代前半の作品。 いやな話 1862 ・・・ 中級官吏が上司のいびりに耐えながら食事。むかついた気分で帰宅する途中、貧しい街でにぎやかな音と灯りを見つける。深夜のそれは…

チェルヌイシェフスキー「何をなすべきか 上」(岩波文庫) ペテルブルクの貴族の娘ヴェーラが男の所有物であることを拒否し人民と暮らすまでの一代記。

19世紀のロシアの哲学者、経済学者。ナロードニキ運動の創設者の一人。1863年獄中にあったときに、4か月で書いたのがこの小説。発表前に検閲に会ったが、特に問題視されずに、雑誌に三回にわけて連載。大きな反響を呼んで、単行本が出たら発禁になった。その…

チェルヌイシェフスキー「何をなすべきか 下」(岩波文庫)-1 男女同権には女性が男の束縛から解放されること、経済的自立と教育が不可欠。

2020/01/28 チェルヌイシェフスキー「何をなすべきか 上」(岩波文庫) 1863年 長かった。ほとんどはヴェーラの恋愛と家庭生活について。いれかわりたちかわりにヴェーラの前に男が現れる。ヴェーラは気をひかれたり、幻滅したり。結婚して愛想をつかし、別…

チェルヌイシェフスキー「何をなすべきか 下」(岩波文庫)-2 共同経営や生産消費協同組合の延長に生まれる生活と労働から解放された「宮殿」。

2020/01/28 チェルヌイシェフスキー「何をなすべきか 上」(岩波文庫) 1863年2020/01/27 チェルヌイシェフスキー「何をなすべきか 下」(岩波文庫)-1 1863年 1863年 「宮殿」の比喩が二回出てくる。この比喩には同時代のドスト氏が「地下室の手記(地下生…

フョードル・ドストエフスキー「地下生活者の手記(地下室の手記)(河出書房)-1 チェルヌイシェフスキーは共同体(共同経営や組合など)の規範や組織化について語り、「ぼく」は自意識や内面の個人(の自由)について語る。

タイトルは米川正夫がつけたもの。江川卓訳(新潮文庫)では「地下室の手記」。原題に即すると「地下室」が正しいというが、本書がチェルヌイシェフスキー「何をなすべきか」批判の書というとき、同書(岩波文庫版)に出てくる「地下室の人」の意味を持って…

フョードル・ドストエフスキー「地下生活者の手記(地下室の手記)(河出書房)-2 チェルヌイシェフスキーの「宮殿の人」に対するド氏の「地下室」の住人。

2020/01/23 フョードル・ドストエフスキー「地下生活者の手記(地下室の手記)(河出書房)-1 1864年 「ぼく」が普通の部屋住まいであるにもかかわらず、「地下室」の住人、「地下生活者」であると自認するのは、チェルヌイシェフスキー「何をなすべきか」の…

フョードル・ドストエフスキー「地下生活者の手記(地下室の手記)(河出書房)-3 第2部は「美を意識するときに見苦しい行動をしでかす」男のドタバタ騒ぎ。いやストーカー的嫌がらせとセクハラの告白。

2020/01/23 フョードル・ドストエフスキー「地下生活者の手記(地下室の手記)(河出書房)-1 1864年2020/01/21 フョードル・ドストエフスキー「地下生活者の手記(地下室の手記)(河出書房)-2 1864年 第2部「ぼた雪にちなんで(米川訳では「べた雪の連想…

フョードル・ドストエフスキー「地下生活者の手記(地下室の手記)(河出書房)-4 チェルヌイシェフスキー「何をなすべきか」では議論(または講義)が行われる。ドスト氏の「地下室の手記」ではひとりごとか説教。

2020/01/23 フョードル・ドストエフスキー「地下生活者の手記(地下室の手記)(河出書房)-1 1864年2020/01/21 フョードル・ドストエフスキー「地下生活者の手記(地下室の手記)(河出書房)-2 1864年2020/01/20 フョードル・ドストエフスキー「地下生活者…

フョードル・ドストエフスキー「賭博者」(河出書房) 賭博に感じる恐怖とふるえ、全生命が凝縮している一瞬、忘我の法悦。自己破壊・自己破滅を望むマゾヒスティックな気分。

「罪と罰」連載中にどうしても長編を書かねばならなくなり、にっちもさっちもいかないので、速記ができる女性を雇い(のちの妻)、27日間で口述筆記した。すでに構想ができていたのと、舞台がなじみの賭博場であったので取材が必要なかったので、驚異的なス…

フョードル・ドストエフスキー「永遠の夫」(河出書房) とてつもないエネルギーをもった闖入者が語り手の生活をぐちゃぐちゃにし、冒険に導き、新たな認識に導く。闖入者は失敗して、語り手の周囲から放り出される。

「白痴」1868年と「悪霊」1871年の間の1870年に出た中編。 中年(38-39歳)の独身男ヴェリチャーノフはとみに老いを感じ、ヒポコンデリー(というが記述をみるとうつ病だ)にかかっている。町で帽子に喪章をつけた男が妙に気になり、あとを追いかけていたら…

フョードル・ドストエフスキー「論文・記録 上」(河出書房)-1「ロシア文学について」 言語と土地(ボーチヴァ)を共有するネーションの住民が国家の主人になる。ナショナリズムの発生過程が見える。

ドストエフスキーが書いた創作・手紙以外で、かつ「作家の日記」以外の媒体で発表したもの。このあとでてくる「ヴレーミャ」はドスト氏の兄ミハイルと一緒に出していた雑誌。収録されたものの多くは匿名であるが、のちになってドスト氏の筆になるものと確認…

フョードル・ドストエフスキー「論文・記録 上」(河出書房)-2 「作家の日記」の前に書かれた政治的・論争的な文章。創作ではなかなか見えない政治的主張や偏見が顔をのぞかせる。

ここでは政治的なもの、論争的なものを集める。ドスト氏のジャーナリスティックな側面がうかがわれる。同時に、創作ではなかなか見えない政治的主張や偏見が顔をのぞかせる。 アポロン・グリゴリエフについて 1864.09 ・・・ N.ストラーホフの論文をネタにし…

フョードル・ドストエフスキー「論文・記録 下」(河出書房)-1 「作家の日記」の前に書かれた政治的・論争的な文章。あてこすりや話題のすりかえ、揚げ足取り、罵倒に揶揄、人格批判などのでてくる筋の悪いものばかり。

政治的なもの、論争的なものの続き。たいていは雑誌に匿名で発表されたもの。内容などからドスト氏の筆になるものと研究者によって認定された。 理論家の二つの陣営 1862.02 ・・・ ペテルブルグの論壇批評。西洋派とスラブ派の両方をけなす。匿名の文章で、…

フョードル・ドストエフスキー「エドガー・ポーの三つの短編」(米川正夫訳)

フョードル・ドストエフスキー エドガー・ポーの三つの短編 エドガー・ポーの二、三の短編は、すでにロシヤ語に翻訳されて、わが国の雑誌に掲載された。われわれはまた新しく三つの短編を読者に捧げる。彼はじつに奇妙な作家である、――大きな才能を持っては…

フョードル・ドストエフスキー「論文・記録 下」(河出書房)-2 「作家の日記」の前に書かれた思想や文芸批評。愛郷と愛国をごっちゃにしたナショナリズムが排外主義を伴っている。

「第2部」に収録されたのは、思想や文芸批評など。 土地主義宣言 1861.01から ・・・ 兄ミハイルの主宰した雑誌の趣旨を説明する文章(寄稿者にはツルゲーネフがいた。のちにドスト氏はツルゲーネフと仲違い)。農奴解放でロシアは新しい時代になったが、「…