odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

三島由紀夫「潮騒」(新潮文庫) 都会に住む知識人が日本の田舎に理想的なカップルと理想的な恋愛と理想郷を夢見る。

昨日取り上げた「ダフニスとクロエー」をこの国に移植したものはなんだろうと考えて、この作品を取り上げることにする。もちろん、初出当時からこのことは指摘されていたのであって、とくに目新しい意見ではない。 いくつか釈明をしておくと、以下を書いたの…

ロンゴス「ダフニスとクロエ」(岩波文庫) 2世紀ローマでギリシャ語でかかれた大衆文学。都市市民の有閑マダムが好んだ田園の恋愛もの。

昨日のエントリーでロンゴスをあげたので、「ダフニスとクロエー」を取り上げます。BGMはもちろん、ラヴェルのバレエ音楽で。マルティノン指揮のが気持ちよい。 2世紀ローマでギリシャ語でかかれた大衆文学のひとつ。主要な読み手は、都市市民の有閑マダムで…

カンパネッラ「太陽の都」(岩波文庫) 資本主義型自由経済や民主制がない時代に構想された哲人政治の都市型ユートピア。

昨日のエントリを読み直したら、福永武彦の「未来都市」が「太陽の都」に似ているなあと妄想が起きた。当初の予定を変更して、緊急(笑)エントリーでカンパネッラを取り上げます。 人生の三分の二を獄中で過ごしたという奇人(マルキ・ド・サドの獄中生活も…

福永武彦「廃市・飛ぶ男」(新潮文庫) 福永文学のロマンティシズムの主題は「会いたいよお」、でもいつも遅かった

夜の寂しい顔 ・・・ 田舎の漁村に高等学校受験勉強に来た15歳の少年の心象風景。父は死に、母は彼を邪険にし、姉も死んでいる。家庭で孤独で、漁村においては生産活動に参加できないことでも孤独。夢見るのは母性への憧れと女性へのサディスティックな感情…

福永武彦「夢みる少年の昼と夜」(新潮文庫) 世界の完全性は失われ自分は崩壊していくしかないというロマンティシズムの小説

1950年代後半に書かれた短編をまとめたもの。作品名の後の数字は初出年。 夢みる少年の昼と夜1954 ・・・ 母をなくし、父は遅くまで帰らない一人っ子。ギリシャ神話が好きで、体操は苦手な内向的な少年。夏休みの直前で、彼は神戸に引っ越すことになっている…

AmazonKINDLEのソフトウェアを3.1にバージョンアップした。

メールで連絡が来たので、KINDLEをバージョンアップした。このバージョンアップにより「「3.0.○」から「3.1」になるとの由。今回は写真はなし。1.PCでAmazonの通知メールを開く。2.メール本文のthese instructions.をクリック3.Amazonの案内ページに飛…

福永武彦「風のかたみ」(新潮文庫) 平安末期を舞台にした伝奇小説。恋はすれちがい破れた心はつながらない

時は平安も末のころか。信濃を旅立った若者・次郎信親は、母の妹を訪ねて京の都にでる。願いは田舎でくすぶるのではなく、都で己の運を試すこと。途中、奇怪な陰陽師とであい、あわせて稀代の笛作りから名品を強引に譲り受けたところから事態が変わる。陰陽…

福永武彦「告別」(講談社学芸文庫) 中年男のロマンティシズムはパターナリズムと表裏一体

1962年初出。 中年のおとこ。大学教授で小説家も兼任にしている。彼の友人、上條慎吾は肝臓がんで死のうとしていた。主人公の小説家は上条のことをよく知らないが、彼の介護のために奔走する。上條は戦争中、学生結婚をしてそのまま召集。帰還すると娘が生ま…

福永武彦「夜の時間」(河出書房) ドストエフスキーの息子や娘たちの観念的な恋愛模様

伯父が購入したと思われる昭和30年刊の河出書房版。のちの講談社文庫版ではない。この河出書房版は新書サイズの叢書で、一連の刊行物には伊藤整「典子の生きかた」、三島由紀夫「夏子の冒険」、リルケ詩集、大岡昇平「武蔵野夫人」、石坂洋次郎「丘は花ざかり…

AmazonKINDLEでインターネットに接続してみた

AmzonKINDLEではwebにアクセスできないなどと間違ったことを書いたので、wifi環境下でアクセスしてみた。wifiにつなぐ方法は省略。シンプルに言うとHOME画面で「MENU]をクリックすればたいていのオプション機能が開くということ。wifiのパスワード入力はなか…

モーリス・ルブラン「怪盗紳士リュパン」(創元推理文庫) リュパン初登場。失敗もするし、女には振られるし、敵の罠に簡単にひっかかるが、若いリュパンは落ち込まない。

名探偵シャーロック・ホームズとならぶ推理小説史上の巨人、アルセーヌ・リュパンは世界中の老若男女から親しまれている不滅の人間像である。つかまらない神出鬼没の怪盗、城館やサロンしか荒さぬ謎の男、変装の名人、ダンディでエスプリにあふれた怪盗紳士…

モーリス・ルブラン「リュパンの冒険」(創元推理文庫) 大人気になったリュパンは早速舞台に登場。ソーニアはリュパンがほれるのも当然と思える魅力的な女性。

過去10年間フランス警察を手こずらせてきたリュパンは、いまや一種の国民的英雄の観を呈するに至った。シャーロック・ホームズも名刑事ガニマールも、ことごとくリュパンの前に敗北を喫している。そのリュパンが、今度はシャルムラース公爵の居城にある古美…

モーリス・ルブラン「リュパンの告白」(創元推理文庫) 駆け出しの青二才が持つ若さと初心さがリュパンの魅力。

リュパンは長編のみならず数々の短編でも活躍して、豊富なトリックがミステリ・ファンを楽しませてくれる。本書はリュパン・シリーズの中でも最高の評価を受けている短編集であり、名作「赤い絹の肩掛け」を含め、「太陽の戯れ」「結婚の指輪」等全8編を収録…

モーリス・ルブラン「リュパン対ホームズ」(創元推理文庫) イギリス人ホームズとフランス人リュパンがテーブルをはさんで見栄の張り合い、推理比べ。

百万フラン当選の宝くじの紛失と、フランス王冠にまつわる伝奇的な青ダイヤの盗難に端を発した、一連の怪事件解明に乗り出す名探偵シャーロック・ホームズ。フランス対イギリス、ホームズかリュパンか? トラファルガーの復讐戦を自負するリュパンの活躍。フ…

モーリス・ルブラン「奇巌城」(創元推理文庫) 悪を体現したリュパンはすべての宝を失い悲劇の王をなる。棚ボタで勝利を得たボールトレは二度と登場しない。

ル・アーブルの海岸にそびえ立つ、無気味な古城、その中に千古の歴史と伝説を秘めて眠る巨万の財宝! フランス大革命に断頭台の露と消えた王妃マリー・アントワネットが書き残した紙片の謎は、とめどもなく拡がって、リュパンと17歳の少年との暗号解読の競争…

モーリス・ルブラン「水晶の栓」(創元推理文庫) タイムリミットテーマに証拠品の意外な隠し場所に魅力的な悪役。ルパンの恋心と失恋がテーマになった最初の作品。

水晶の栓〉とは何か? 謎は謎を生んで、複雑怪奇な様相を呈するに至る。6か月にわたるリュパンの不運・過失・模索・敗北は何を意味するのか? 運河事件に端を発し、部下の裏切りと謎の人物、剛毅、果断、沈着、明哲、大胆洒脱な怪人との対決が始まる。水晶の…

青空文庫をAmazonKINDLEで読んでみた

青空文庫というボランティアサイトがあり、そこには著作権の切れた主として文学と随筆、詩歌などが公開されていることはご存知だろう。iphoneにはi文庫という無料アプリがあり、webサイトからダウンロードして、読むことができる。あいにくKINDLEにはこのよ…

モーリス・ルブラン「続813」(新潮文庫)

「謎の人物LMの手によって刑務所に放り込まれたルパンは、持ち前の沈着果敢さで警察陣を翻弄して脱獄に成功。全ヨーロッパの運命を握る秘密を解く鍵が必ずあるに違いない。が、またしてもLMの恐るべき刃は先回りしていた。LMとはいったい何者なのか? ルパン…

モーリス・ルブラン「813」(新潮文庫)

<ダイヤモンド王>と呼ばれる大富豪ケッセルバック氏は、全ヨーロッパの運命を賭けた重大秘密を握ってパリに出た。その全貌を明らかにすべく、怪盗紳士アルセーヌ・ルパンが会見したその夜、氏は何者かに刺殺されてしまった。現場に残されたレッテル”813”と…

モーリス・ルブラン「水晶の栓」(創元推理文庫) タイムリミットテーマに証拠品の意外な隠し場所に魅力的な悪役。ルパンの恋心と失恋がテーマになった最初の作品。

昭和初期の雑誌「新青年」で当時の探偵小説作家に「あなたのもっとも好む探偵小説は?」というアンケートが行われた。当時のこととて、ヴァン・ダインとかポオとかルルーとかがあがるなか、小栗虫太郎は「三十棺桶島」を選択したのだった。ほかにひとり「813…

モーリス・ルブラン「虎の牙」(創元推理文庫)

2億フランの遺産をめぐって殺された父子。その怪死の秘密の一端をつかんだ刑事は無残にも毒殺され、その手には“虎の牙”に似た歯形のついたチョコレートが握られていた。遺産相続をめぐって奸策緻密な犯人の驚嘆すべき犯罪計画の前に、窮地に立たされる不死身…

モーリス・ルブラン「八点鐘」(新潮文庫) ルパン「八回鐘がなったとき、オルタンスさん、あなたに約束をかなえましょう」

怪盗アルセーヌ・ルパンがレニーヌ公爵の名で、若くて美しい婦人オルタンス・ダニエルと共に、8つの冒険に挑戦する。怪紳士レニーヌは、生得の天才的な閃きと、過去の強盗の体験から身につけた豊富な知識で、虐げられた人達、無実に泣く人達に手を貸す。3ヶ…

モーリス・ルブラン「バーネット探偵社」(新潮文庫) 警察の手に負えない不可能犯罪を解決するけど、ちゃっかり余禄をいただいちゃいます。

1928年作。ジム・バーネットというイギリス人が「無料調査」の看板で探偵事務所を開いている。そこには貴族の末裔とか資産家とか資産運用の代理人などが訪れて(ときには警察官も)、事件の解決を依頼する。バーネットはスタイリッシュに活躍し、事件を解決…

モーリス・ルブラン「金三角」(創元推理文庫)

篤志看護婦の危機を救ったパトリス大尉は、彼女の夫が殺され、その手に握っていた紫水晶のメダルと“金三角”という走り書きから、奇怪な事件に巻き込まれた。“金三角”とは? フランス金貨10億フランの謎とは? 二人の男女と国家的機密とが交錯する怪事件。大…

モーリス・ルブラン「カリオストロの復讐」(創元推理文庫) ひとかどの男になったラウール(ルパン)は母性が命じた「父を打倒しろ」を実行する実の息子と対峙することになる。

パリ近郊の冬の別荘地で、大金を保管する老人の動向をうかがっていたラウールことリュパンは、老人の姪が殺され、狙っていた大金も消え去るという事件に巻き込まれた。しかし、目に見えぬ運命の糸に翻弄される息子と覚しき青年とリュパンの苦闘の前に立ちふ…

モーリス・ルブラン「カリオストロ伯爵夫人」(創元推理文庫) 母を知らないラウール(ルパン)は母性に飢えているが、母性が自分を束縛するようになると打倒する対象に代わる。

ラウール・ダンドレジーは、二つの組織が追う莫大な宝石のありかをめぐる抗争に巻きこまれた。天性の美貌と才智に長けた悪の華、妖しい魅力をもつカリオストロ伯爵夫人とは何者か? そして中世の修道院の財産の行方は? クラリスへの思慕を胸に秘め、若きア…

モーリス・ルブラン「二つの微笑を持つ女」(創元推理文庫) 侯爵とギャングと警察とリュパンが美女を追いかける。全員が二つの名前と顔を持っていて、正体が暴かれたら別の仮面をかぶる。

ジャン・デルルモン侯爵邸に忍び込んだラウールは、未解決のまま謎とされている15年前の惨劇――凶弾に倒れた歌姫の死に、侯爵がかかわっていることを知った。果たして事件の裏に潜むものは何か。瓜二つの金髪の美女。ギャングの親分を追うゴルジュレ警部。い…

モーリス・ルブラン「オルヌカン城の謎」(創元推理文庫) リュパンは国家や共同体のモラルに抵触する犯罪者だから反独プロパガンダ小説には幻としてしか登場できない。

新妻の母親の肖像画を前にして、ポール・デルローズの血は凍った。画中の女性こそ、16年前に彼の父親を刺し殺した犯人ではないか! これは運命か、それとも宿命か……。妻が残していった日記を手がかりに、怪盗紳士アルセーヌ・リュパンの助力を得て、義弟とと…

モーリス・ルブラン「特捜班ヴィクトール」(創元推理文庫)

リュパンが逮捕される。神出鬼没、天下無敵の怪盗紳士が豚箱入りとは。債券の盗難事件を発端として展開する波瀾万丈の大絵巻のなかで浮きつ沈みつする美女、こそ泥、えせ貴族たち……それを押しのけ、ヴィクトールは遂にめざすリュパンをしとめる。しとめるこ…