odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

赤塚行雄「考える熟語集」(講談社文庫) 1960年代から今日(1986年)に至るまでの日本とアメリカの学生用語、風俗語、時事用語そのほかの現代キーワード集。

著者は1930年生まれ。出版は1986年なので、55歳のとき。1960年代から80年代というのは、20歳から50代にあたる。たまたま生まれ年が区切りがいいので、自分の人生と年代が合致して考えやすいことになった。 「1960年代から今日に至るまでの日本とアメリカの学…

羽仁五郎「君の心が戦争を起こす」(光文社)

出版されたのは1982年暮れ。自分の見聞でこの年をまとめると、前年ごろにポーランドの「連帯」運動が非合法化され、韓国の軍事政権が別の軍事政権になり、中国の四人組裁判の影響が取りざたされ、イランのイスラム革命が混沌とした様相を示し、ゴルバチョフ…

羽仁五郎「教育の論理」(講談社文庫) 文部省は教育の基本的人権を尊重しない、地方自治に違反し、教師と生徒(および両親)の管理を行う。本来の役割と任務を行わない。

この本に書かれたことのいくつかが、筑波大学と関係している。「新しい大学」と目されて作られた大学でこの著者の講演会を開こうとしたところ(開学3年目の1977年)、当局のお達しで不許可になる。「本学に批判的な人物の講演は認めがたい」とかいう理由。197…

羽仁五郎「都市の論理」(勁草書房)

これも20数年前(2005年当時)に購入し、読みかけて、理解できなくて放置しておいたもの。久方ぶりに取り出して読み出すと、きわめてすらすらと読み進めていけた。西洋の中世から近現代の歴史を少しは学んできたのが理由と思う。 もとは1967年の自主講座(懐…

桜井哲夫「思想としての60年代」(講談社) 自身の20代がほぼ1960年代と重なる著者によるこの10年間の鳥瞰したエッセイ。

自身の20代がほぼ1960年代と重なる著者によるこの10年間の鳥瞰。個人的体験を交えていて、それほど「科学的」ではなく、むしろその時代の気分を味わうためのものかしら。初出は1988年。 青春の伝説―ポール・ニザンと『アデン・アラビア』 ・・・ 「ぼくは…

赤塚行雄「戦後欲望史 60年代」(講談社文庫)

表紙は、上段がビートルズ(左からジョージ、ポール、リンゴ、ジョンと思うが自信がない)。下段は左から植木等、デビィ夫人、不明、岸信介、背後に全共闘のバリとゲバ棒写真。 サブタイトルが「黄金の60年代」とあるわけで、この時代をそのように規定する…

学生運動研究会「現代の学生運動」(新興出版) 1960年安保闘争を総括。島渚監督の「日本と夜と霧」の参考書。

21世紀のいまどき、誰がこんなものを読むのかというようなタイトル。しかも1960年代後半の全共闘をテーマにしているならまだしも(この文章を書いたのは2006年)、これは1960年安保闘争を総括したもの。書かれたときの状況とテーマは大島渚監督の「日本と夜と…

日高六郎「1960年5月19日」(岩波新書) タイトルの日付は、衆議院で安保条約締結が採決された日。当時の人々の共感を呼んだのは、主婦や高齢婦人、高校生らの運動。

タイトルの日付は、衆議院で安保条約締結が採決された日。それまでは議会内の小委員会で審議が行われていた。社会党議員の質問に政府はまともに答えられない場面があった。議事の休憩中に、突然審議終了・採決などの議案が自民党から出される。議事録も取れ…

保坂正康「六〇年安保闘争」(講談社現代新書) 日本の対米従属を決定つけた1960年の日米安全保障条約締結阻止闘争の概要。

この本が出たのは1985年(奥付は1986年1月)。60年安保から25周年という企画だった。当時の朝日ジャーナルの記事だったと思うが、あるラジオ局が60年安保のドラマを流した。そのあと、闘争に参加した人たち(当時40-50代)と若者(20代)が対談することにな…

大西巨人「天路の奈落」(講談社)

1950年のこの国の共産主義運動を自分の知っている範囲で書き出すと、大きなのはレッドパージ。朝鮮戦争勃発後のGHQの指導方針変更(民主主義定着のために労働運動を隆盛にするから、反共へ)があって、公務員や企業労働者のうち党員が解雇された。内部では所…

安東仁兵衛「日本共産党私記」(文春文庫) 1950年代の共産党の主流派と反主流派の対立を経験した人の手記。

1928年に生まれた著者が1948年に東大に入学するとともに、共産党細胞として活動を開始。その後、1961年に離党するまで反主流派であり続けた著者の立ち居地を明らかにする。年齢からすると、戦前に共産党ないし無産者活動を開始した人たち(野間宏とか埴谷雄…

無量塔蔵六「ヴァイオリン」(岩波新書) 演奏だけでなく楽器製作でも西洋に追いつきたいのが日本人の欲望

この本にはヴァイオリンの歴史がかかれているが、それをみるとヨーロッパは遅れていたのだなあと思う。すなわち、たとえば雅楽の楽器は7-8世紀には完成しているし、アラビアでは弦楽器が古代にはあったが、ヨーロッパでは10世紀ころまで弦楽器はなかった。よ…

中村紘子「ピアニストという蛮族がいる」(文芸春秋社) 規範からはずれた神話的なスケールの奇人変人ピアニストと挫折した日本人女性ピアニスト。

ピアニストが同業他社のユニークな所業を紹介した。観客としてだと、ステージか録音/録画でしかピアニストを知るしべはなく、おおむね会話ができない。なので、ステージの下やスピーカーの前にいるものは、ピアニストにスター性やカリスマ性をみたりする。そ…

都筑道夫「西洋骨牌探偵術」(光文社文庫) 泥縄でタロウ・カードを覚えた誠実な占い師は足を使って依頼人の悩みを解決する。

鍬形修二は妻に三度も別れ、頼りの兄も亡くなった。タロウ・カードを泥縄で覚えて占い家業をするものの、誠実な占い師は足を使って依頼人の悩みを解決するはめになる。5編しかないが、印象深い探偵の登場。 腎臓プール ・・・ 邸内のプールに飛び込んだ妹(…

都筑道夫「悪魔はあくまで悪魔である」(角川文庫) 1974年から1976年にかけて雑誌「野生時代」に連載された短編を24編収録。

1974年から1976年にかけて雑誌「野生時代」に連載された短編を24編収録。このあと同じタイトルで「都筑道夫恐怖短篇集成〈1〉」ちくま文庫が出版されているが、たぶん収録内容が異なる。ご注意あれ。角川文庫版のほうがよいのは、雑誌に掲載されたときに描か…

都筑道夫「阿蘭陀すてれん」(角川文庫) 1977年初出の怪奇、SFものショートショート集。1985年に新潮文庫で出たときは「25階の窓」。

1977年初出のショートショート集。1985年に新潮文庫で出たときは収録短編を4編減らし、総タイトルも「25階の窓」に改題された(収録作品が25編だったので総タイトルに25がついたとのこと)。このあと同じタイトルで「都筑道夫恐怖短篇集成〈2〉」ちくま文庫…

都筑道夫「雪崩連太郎幻視行」(集英社文庫)

雪崩連太郎は旅行雑誌に主に怪奇譚を発表しているルポライター。1970年代に反知性・反理性のムーブメントがあって、オカルトがずいぶん流行った。映画「エクソシスト」とかユリ・ゲラーとかスプーン曲げ少年など。そういう傾向が旅行雑誌にも反映したので、…

都筑道夫「雪崩連太郎怨霊行」(集英社文庫)

2015/06/08 都筑道夫「雪崩連太郎幻視行」(集英社文庫) すごいどうでもいい話をすると、この本の最初のタイトルは「雪崩連太郎幻視行/怨霊紀行」だった。マンガ家たがみよしひさがこの作家のファンらしく、最初に刊行された短編マンガ集のタイトルは「怨霊…

都筑道夫「黒い招き猫」(角川文庫) 1978年の怪談ショートショート集。怪談は合理的で論理的な思考をする物語。

怪談ショートショート集。1978年角川文庫初出。 黒い招き猫*/目のない賽*/腕時計*/幽霊屋敷*/新世代語辞典/夜のオルフェウス/粘土の人形*/過疎地帯/呪法/静かな夜/小鳥たち*/ひどい熱/狐つき/壁の影*/宙づりの女/心霊現象/百物語/ベランダの眺め/もういや!/…

都筑道夫「翔び去りしものの伝説」(徳間文庫) 転生したら、西洋中世の騎士小説みたいな場所で王子の身代わりになり暗殺されることになった件。ホープ「ゼンダ城の虜」のリメイク。

その世界は、西洋中世の騎士小説みたいな場所。ひとつの王国が周辺地域を収めているが、王位継承者が不在だった。老臣、重臣らは無能。そこで二人の魔術師が暗躍を開始。ひとりの黒魔術師ルンツ博士は地球で事故にあった男をこの世界に呼び寄せ、誘拐してお…

都筑道夫「都筑道夫スリラーハウス」(角川文庫) 1979年初出のショートショート集。ふしぎや恐怖は、本人の深層心理の中にある。自分のなかの怪物をみつけることが、たまらなく恐ろしい。

1979年初出のショートショート集。文庫になったのは1984年。 安定の品質。アイデアも、落ちも、文章も。どの一編でも付け足しがいらないくらいに練られている。名人芸。 物語の主人公の多くは、著者とおなじ50歳前後。暮らしに不満はないが、なんとなく物足…

都筑道夫「銀河盗賊ビリイ・アレグロ」(集英社文庫) 銀河をまたにかけるその名を知らぬ者のいない大盗賊。飛び切りの難題の依頼で盗みを働く。

いつともしれない遥か未来。それともむかしむかしか。主人公は、ビリィ・アレグロ・ラトロデクトス・ナルセ。銀河をまたにかけるその名を知らぬ者のいない大盗賊。一人で行動するのを常として、あいぼうは高速宇宙船「ブラック・ウィドウ」。そこにつまれた…