2013-05-01から1ヶ月間の記事一覧
新古典派経済学者で、レッセ=フェールの信奉者で、小泉内閣の構造改革推進論者で、いくつもの経済政策を提言してきた著者が、2006-2008年ころのさまざまなできごと(リーマン・ショック、格差社会、無差別殺人、医療の崩壊、食品偽装など)にショックを受け…
著書のことばとは少し違った言葉で主題をまとめると、ここの主要な問題は経済のグローバリゼーションと国家の権限の拡大に対する批判。すなわち、グローバル化した経済の問題は、(1)利子を目当てに投資するものたちと多額な報酬を期待する経営者によって…
主題はエンデの「金」に対する疑問と、その解決方法。ここでは地域通貨(LETS)が取り上げられている。 最大の収穫は、邦訳が一冊も出ていない経済学者シルビオ・ゲゼルを知ったこと。経済学者として、「国家に抗する貨幣」のあり方を考えていた人がいるとは…
柄谷行人「世界共和国へ」は資本主義経済社会の行き詰まりを打開するための理念を示しているが、具体策には乏しい。それは読者個々人で現場を作ることになるのだが、どのような問題をどのように解決するのかということを具体例なしに個人で抱えるには大きす…
著者が1999年の初頭に書いた世界各国の経済状況に関するまとめ。この時代を俯瞰しておくと、アメリカは安定成長。90年の初頭からアジアの竜(韓国、シンガポール、マレーシア、インドネシア)が成長経済を達成していた。同じく、メキシコやアルゼンチンなど…
佐和隆光「市場主義の終焉」で紹介されていた経済書。著者は国際経済、とくに貿易の専門家であって(2008年にノーベル経済学賞を受賞)、ここに収録された論文は経済専門誌に掲載された。とはいえ、この人は啓蒙家でもあり、難しい計算式を使わないでも、経…
先にぶっとい中村勝己「世界経済史」を読んでいたので、ここで書かれた事例がいつごろのどこのことかがはっきりしたのがよかった。 この本では、歴史の記述を考えるのではなく、経済の発展のモデルを作ること。そのモデルは妥当性を持っているように思える。…
まず本書の中身を鳥瞰。2000年10月現在の状況を描写。 序章 市場主義の来し方ゆく末 ・・・ 1970年代末から1990年代末までの市場主義、自由主義経済政策は終わりにしなければならない。市場の調整機能に任せられない状況が様々な問題を生じている。市場主義…
巻末の都留重人の解説を借用してまとめる。ポイントは、インフレと失業にどのように対応するかということ。 ・最初に、市場が古典派経済学の規定していた自由競争の場でなくなったこと。巨大企業は、市場をコントロールすることができる。大企業は販売価格を…
アダム・スミスの読み直しとそれによる経済のグローバル化の批判。スミスの生きた時代が漱石「文芸評論」の時代であること、そして「産業革命」の時代であること(下記のように実際は別の経済革命が重要だった)。そのころから300年もたつと、どうもわれわれ…
2013/05/20 佐伯啓思「アダム・スミスの誤算」(PHP新書) 序章 凋落したケインズ ・・・ ケインズの政策は一国の閉鎖的な経済環境を想定していた。外国との開放経済を調べてみると、1)一国の独自の経済政策、2)貿易のバランス、2)為替レートの安定…
「リスク」という言葉はどうもえたいが知れないし、どうも誤解された使われ方をしているのではないか(自分の責任とは無関係に降りかかってくる災難みたいな意味)。なので、このタイトルの本を読む。 前半は、リスクの考え方や計算に使われる確率や統計、推…
2013/05/16 ピーター・バーンスタイン「リスク 上」(日経ビジネス文庫)第10章 サヤエンドウと危険 ・・・ ようやく株の話。株価は変動が激しいが、長期的にみれば「平均への回帰」がみられる。問題は、「平均」が長期的に変動していくこと。ほかにもいく…
1977年に初出で、ちくま文庫に収録。まず、サマリーまで紹介されている幻想小説を順にリストアップ。 イギリス幻想文学をほぼ網羅。 マンディアルグ「ロドギュヌ」 トールキン「指輪物語」 E・R・エディスン「ウロボロス」 ラッセル=ホウバン「ボアズ=ヤ…
2002年の初出だけど、手にしたのは2013年。懐古的な気分になるのは、ミステリーやSFではこの種のガイドブックはそれこそ江戸川乱歩や筒井康隆のそれに始まって、すでに古い歴史を持っているけど、こと怪談・怪奇小説・ホラーではその種のおおがかりなものは…
1.ゴジラ映画をまとめてみ直すと、ゴジラを見て悲鳴を上げる人は数多いが、河内桃子に勝る人はいない。(沢村いき雄、大村千吉、蛍雪次郎の達人に敬意を表しつつも)※ しかも年を経るごとに悲鳴が下手になっていると思うのだ。2.ゴジラが最初に顔を見せ…
自分の持っているCDには、1900年に録音された川上音二郎一座とか、1904-5年に録音された歌入りの「軍艦行進曲」などがある。そこに収録されたこの国の人たちの発声とかイントネーションとか抑揚などは、もう21世紀とは全く異なってしまった。たぶん、昭和初…
1970年半ばに現代教養文庫が戦前の異色作家の傑作選を出した。小栗虫太郎、夢野久作、久生十蘭、谷譲次ら。自分はこの中で小栗を選び、全5冊を購入した。そのあとに戦後の異色作家選をだし、橘外男、山田風太郎、香山滋が選ばれた。自分はこの中で香山を選…
現代教養文庫で出た選集の第3巻。 海鰻荘奇談1947 ・・・ 巨万の富を持つ博物学者・塚本博士が岬に豪壮な私設水産研究所を作る(これは蜂須賀侯爵をネタにしているな)。そこにはうつぼがたくさん養殖されている。これはまあよいとして、家族関係が複雑。最…
1870年代にエッフェル塔ができてから、好きにしろ嫌いにしろ、この建物を意識しないわけにいかなく、この建物をめぐる物語はたくさんあった。これがそのひとつ。建設当時の苦労はやはり神話になっていて、しかもその動力に関する話は1929年当時には人の記憶…
レーモン・クノーは映画ファンには「地下鉄のザジ」の原作者として(中公文庫に翻訳あり)、アンサイクロペディアファンには「文体演習」で有名な作家。1903年に生まれて、奇想天外な小説や詩や戯曲を書き、1976年没。フランスにはこういう洒脱な人がときど…
大不況から10年も経過していたが、経済は復興せず、青年画家イーベンは売れない風景画しか書かない。夕暮れの公園で一人の少女に出会う。数日後に再開したとき、彼女ジョニーはなぜか数年を経たかのように成長していた。イーベンは彼女に魅かれ、肖像画を描…
「町を出た少年が迷い込んだのは、ゴーストでいっぱいのジャングルだった。耐えられぬ悪臭を放つもの、奇妙なかたちをして不思議なしぐさをするもの…。ヨルバ族に先祖から伝わる物語をふまえて、ドラム・ビートに乗せて紡ぎ出される幻想の世界。ナイジェリア…
自分のもっているのは創元推理文庫ではなく、1975年初出のハヤカワポケットミステリ。なので、タイトルは異なっている。画像参照のこと。 さて、ヒッチコック監督の1961年の映画「サイコ」の原作であるということで、もう紹介は完了。くだくだしいストーリー…