odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

日本文学_エンタメ推理小説

夏樹静子「ガラスの絆」(角川文庫)

ずっと昔のその昔に、「Wの悲劇」を読んだ記憶がある。中身は忘れた。それ以来のトライ。1980年文庫初出なので、発表は1970年代半ばか。 ガラスの絆 ・・・ サイバ合板の社長・信之は治子と結婚して数年。夫と妻の両方に不妊の原因があり、人工授精をして、…

柳広司「贋作「坊ちゃん」殺人事件」(集英社文庫)

「教師を辞め東京に戻って三年、街鉄の技手になっていたおれのところに山嵐が訪ねてきた。赤シャツが首をくくったという。四国の中学で赤シャツは教頭、山嵐はいかつい数学の教師の同僚だった。「あいつは本当に自殺したのか」を山嵐は殺人事件をほのめかす…

澤木喬「いざ言問はむ都鳥」(創元推理文庫)

「若葉萌す春、緑なす夏、紅葉の秋、枯槁の冬……そして新生の春。植物学者は四時とりどりに忙しい。その生活に重ね合わせて、あるいは花占いの果てとも見える場景に犯罪を匂わせ、あるいは自殺志願者が遺体発見を遅らせたがった理由に植物学的考察を試みる。…

倉知淳「星降り山荘の殺人」(講談社文庫)

「雪に閉ざされた山荘。そこは当然、交通が遮断され、電気も電話も通じていない世界。集まるのはUFO研究家など一癖も二癖もある人物達。突如、発生する殺人事件。そして、「スターウォッチャー」星園詩郎の華麗なる推理。あくまでもフェアに、真正面から「本…

森博嗣「冷たい密室と博士たち」(講談社文庫)

「同僚の喜多助教授の誘いで、N大学工学部の低温度実験室を尋ねた犀川助教授と、西之園萌絵の師弟の前でまたも、不可思議な殺人事件が起こった。衆人環視の実験室の中で、男女2名の院生が死体となって発見されたのだ。完全密室のなかに、殺人者はどうやって…

黒崎緑「しゃべくり探偵の四季」(創元推理文庫)

「和戸君一家に降って湧いた騒動を見事収拾、保住君の新学期は好調な滑り出し。歌って踊れる名探偵とばかりギター片手に謎を解き、夏休みは珊瑚礁で魚と戯れ、また上高地の涼風に吹かれつつ事件の真相を看破する。馴染みの床屋や大学祭の模擬店で推理を聞か…

鯨統一郎「9つの殺人メルヘン」(光文社文庫)

飲み屋にかよう中年(厄年トリオと呼んでいる)。その中に現職の刑事がいて、行き詰った事件の愚痴をこぼす。そこには、メルフェンとたぶん精神分析を学ぶ女子大生がいて(彼女の描き方は中年男の欲望のままだ、美貌の持ち主で、聡明で、感じのよい、人づき…

芦辺 拓「和時計の館の殺人」(光文社文庫)

「田舎町の旧家・天知家で遺言が公開された夜、事件は起こった!一人、また一人と凶行に倒れる相続人たち―。遺言の内容は決して殺人を引き起こすようなものとは思えなかったのだが…。弁護士・森江春策が、連続殺人事件の深層に切り込んでゆく!屋敷を埋め尽く…

芦原すなお「ミミズクとオリーブ」(創元推理文庫)

「美味しい郷土料理を給仕しながら、夫の友人が持ち込んだ問題を次々と解決してしまう新しい型の安楽椅子探偵――八王子の郊外に住む作家の奥さんが、その名探偵だ。優れた人間観察から生まれる名推理、それに勝るとも劣らない、美味しそうな手料理の数数。随…

森雅裕「モーツァルトは子守唄を歌わない」(講談社文庫)

「1781年、ウィーンで作曲家モーツァルトが死ぬ。1809年6月、作曲家ベートーヴェンは訪れた楽譜屋で、モーツァルトの娘と噂されるシレーネと出会う。彼女は、自分の父が作曲した子守唄を、モーツァルトの作品として出版した楽譜屋に、抗議しに来ていた。とこ…

森雅裕「ベートーヴェンな憂鬱症」(講談社文庫)

収録されているのは4編。 1.ピアニストを台所へ入れるな・・・ベートーヴェンの部屋でピアニストが死んだ。彼の断末魔の叫びはアパート中に響き渡った。「よくもやったな!ベートーヴェン!」。状況証拠から冤罪を被るベートーヴェン。そこへ死んだピアニ…

吉村達也「トリック狂殺人事件」(角川文庫)

「警視庁捜査一課の烏丸ひろみに届いた招待状。差出人は《トリック卿》。招かれたのはひろみを除いて、すべて大ウソつきの男と女。場所は雪深い山奥の《うそつき荘》。そこで出されるクイズをすべて解くと賞金はなんと6億円。しかし、ゲームに参加した7人…

山田正紀「蜃気楼・13の殺人」(光文社文庫)

「栗谷村の村おこしマラソン大会の最中、忽然とランナー十三人が消えた!戦国時代の山城・十三曲坂を使った十キロのコースは、途中で抜け出ることのできない、いわば大密室…。後日、消えたランナーの一人が、木に突き刺さった無惨な姿で発見された。奇妙なこ…

竹本健治「匣の中の失楽」(講談社文庫)

これで3度目か4度目かの再読。 この迷宮めいた小説を少し変わった観点からサマリーをかいてみよう。すなわち、序章はたぶん一般的な小説であるとして、ミステリー愛好家の大学生とその周辺の仲間(計12人)のひとりが7月14日の盛夏に密室で刺殺された、とい…

竹本健治「凶区の爪」(光文社文庫)

季節の変わり目のせいか体調不良で集中力が切れていて、読書が進まない。気軽に読めると思って購入。 「会津地方一の名家・四条家で惨劇が起きた。―17歳で史上最年少の囲碁・本因坊となった牧場智久たちが、四条家に招かれた翌朝だった。蔵の白壁に首なしの…

赤川次郎「幽霊列車」(文春文庫)

「とある温泉町で列車に乗った7人が忽然と姿を消すと言う事件が起きた。宇野警部は休暇も兼ねて捜査に赴いた温泉で、女子大生の夕子に出会う。事件に興味を持った夕子は、宇野の姪と言う事で一緒に捜査に乗り出す。非協力的な村人達の中で、唯一協力的な健吉…

島田荘司「切り裂きジャック・百年の孤独」(集英社文庫)

「1988年、西ベルリンで起きた謎の連続殺人。五人の娼婦たちは頸動脈を掻き切られ、腹部を裂かれ、内臓を引き出されて惨殺された。19世紀末のロンドンを恐怖の底に陥れた“切り裂きジャック”が、百年後のベルリンに甦ったのか?世界犯罪史上最大の謎「…

平石貴樹「だれもがポオを愛していた」(集英社文庫)

「米国ボルティモア市郊外で日系人兄妹の住むアシヤ屋敷が爆破された。直前にかかった予告電話どおり、『アッシャー家の崩壊』そのままに幕を開けた事件は、つづく『ベレニス』『黒猫』に見立てた死体の発見を受けていよいよ混沌とするが……。デュパンの直系…

植草甚一「ミステリの原稿は夜中に徹夜で書こう」(双葉文庫)

「ニューヨークから海外ミステリを紹介した「ミステリの原稿は夜中に徹夜で書こう」、背表紙や表紙の写真を集めた「ニューヨークで買ったミステリの本」 、海外ミステリの書評「ミステリ・ガイド」、カルチャーセンターで行われた推理小説講義のテープを起こ…

天藤真「大誘拐」(創元推理文庫)

本を読む前に、DVDになった岡本喜八監督の映画(1991年公開)を見た。1960年代の傑作群と比べると、見劣りのする映画であって、それでもなお1980年以降の映画からすると優れた作品になっているのは立派なものだ。ひとりの監督の作品を年代順にみていくと…

荒巻義雄「エッシャー宇宙の殺人」(中公文庫)

カストロバラバは不思議な港町。町のあちこちにエッシャーの描いた版画、スケッチその他とまったく同じ建物や設備がある。その空間は、我々読者がこの地球にいるような三次元と重力の影響と無関係である。そのために、三次元ではありえない捻じ曲がった空間…

広瀬正「T型フォード殺人事件」(集英社文庫)

日本のSFを立ち上げたうちの一人。残念ながら1972年に急逝。享年42歳(だったかな)。存命であれば、小松・星・筒井・光瀬などと並べられたはずの作家、との由。この人の得意な時間パラドックスSFは厚いのでパスすることにし、晩年の表題作を読む。き…

小林信彦「紳士同盟」(新潮文庫)

「いんちき臭くなければ生きていけない! 思わぬ運命の転変にめぐりあい、莫大な金を必要としたとき、四人はそう悟った。目標は二億円――素人の彼らは老詐欺師のコーチを受け、知恵を傾け、トリックを仕掛け、あの手この手で金をせしめる……。奇妙な男女四人組…

小泉喜美子「弁護側の証人」(集英社文庫)

「ヌードダンサーのミミイ・ローイこと漣子は八島財閥の御曹司・杉彦と恋に落ち、玉の輿に乗った。しかし幸福な新婚生活は長くは続かなかった。義父である当主・龍之助が何者かに殺害されたのだ。真犯人は誰なのか? 弁護側が召喚した証人をめぐって、生死を…

日影丈吉「かむなぎうた」(ちくま文庫)

「ハイカラ右近探偵全集」(講談社文庫)を読んでピンとこなかったのだが、こちらの短編集は面白かった。とはいえ、500ページを読むのに1年ほどかかっているのだから、怠惰な読み手ということになるか。九鬼紫朗「探偵小説百科」(初版)でこの人の名前と「…

海渡英祐「ベルリン1888年」(講談社文庫)

「明治21年冬の伯林(ベルリン)。留学中の若き医学徒の森鴎外はドイツ娘との恋に煩悶の日々を送るが、古城でおきた伯爵殺害事件に遭遇、突明にのりだす。二重密室、背景に鉄血宰相ビスマルク。」 一時期はどの本屋にもころがっていたのに、調べてみると絶版…

結城昌治「ゴメスの名はゴメス」(光文社文庫)

「失踪した前任者・香取の行方を捜すために、内戦下のサイゴンに赴任した坂本の周囲に起きる不可解な事件。自分を尾行していた男が「ゴメスの名は・・・」という言葉を残して殺されたとき、坂本は、熾烈なスパイ戦の火中に投げ出された。香取の安否は? そし…

大藪春彦「血の罠」(徳間文庫)

「俺はかならず妻の仇をとってやる。熱く焦げた銃弾を、そいつにぶち込んでやる――妻を殺された元ボクサー田島君彦の怒りは青く燃える。彼は信頼する新田警部補と組んで非情な復讐を開始した。それが、汚職で警視庁を追われ、金もうけをたくらむ新田の仕組ん…

高木彬光「人形はなぜ殺される」(角川文庫)

「新作魔術発表会・・・ここでギロチンによって首を切り落とされた美女が蘇るという奇術「マリーアントワネットの処刑」が公開されると言う。ところがその舞台裏で切り落とされる首が消失。そしてその直後の殺人現場にはマリーアントワネット役をやる予定だ…

高木彬光「邪馬台国の秘密」(角川文庫)

「邪馬台国はどこにあったか?君臨した女王・卑弥呼とは何者か?この日本史最大の謎に、入院加療中の名探偵・神津恭介と友人の推理作家・松下研三が挑戦する。一切の詭弁、妥協を許さず、二人が辿りつく「真の邪馬台国」とは?発表当時、様々な論争を巻き起こし…