日本文学_エンタメ推理小説
版元の紹介文はざつなので、amazonのものを利用。 「「巨大な敵に狙われている」。元警視庁SPの冬木安奈は、チェスの世界王者アンディ・ウォーカーの護衛依頼を受けた。謎めいた任務に就いた安奈を次々と奇妙な「事故」が襲う。アンディを狙うのは一体誰なの…
「堂」シリーズの第3作という。これを最初に読んだので、背景がよくわからない。たぶん沼四郎なる建築家がたてた奇妙な建物で独立した殺人事件がおきる。事件がおきると、善知鳥神(うとうかみ)という女性が十和田只人(ただひと)というエルデシュ(ポール…
都会の人たちが田舎暮らしにあこがれる。その町のはずれには、芸術家が集まる一角があって、創作と販売の活動を行っていた。街の人々も緩く支援している。でも、何ごとかを起こすと波風がたつ。それも、かつて殺人事件が起こり、その犯人のひとりが逃亡して…
事件に巻き込まれたり、事件の当事者を知っている女性のナラティブ。 マイディアレスト ・・・ 妊婦殺害事件の調査聞き取りの記録。父の存在が薄く、独占欲の強い母にネグレクトされ、勘気の強い妹にバカにされている、空想癖のある女性。疎外が強まるにつれ…
中島敦「山月記」には後日談があった! 李徴が虎になったと袁(えん)さんが報告してから10年後、李徴の息子は疑う。失踪当時4歳で詳細は理解できなかったが、母が、世間がそのようにいう。父が虎になったというなら、自分もいずれ虎になるのではないか。事…
副題は「エラリー・クイーン最後の事件」(2005年初出)。 1977年に日本の出版社がエラリー・クイーンを招待した。そのときのことをのちにクイーンは小説にする。ただ一編だけ未訳だったのが発見されたので、「北村薫」が邦訳することになった。この設定がミ…
「読者が犯人」というアイデアは昔からあって、この国の作でも自分が収集した中では2例ある・・・と書こうともくろんでいたら、作中でちゃんと紹介されていた。それくらいに、著者はきちんと探偵小説の歴史と作例に造詣が深い。なまはんかな知識で読んでい…
193*年。長年の不況と日本による中国侵略戦争は、アメリカに反日感情を強くもたらした。ドイツやイタリアのファシズムに影響を受けてファシスト政党ができるなど、排外主義と人種や民族の差別が多くの人をとらえる。彼らの不満(失業や低賃金、貧困、セイフ…
4人が目覚めたとき、閉ざされた部屋にいた。この半年ほど疎遠になっていた4人は、トイレの壁に貼られた事故写真と「お前らが殺した」という赤い文字に戦慄する。閉じ込められたのは地下の核シェルター(市販の核シェルターがブームになったのは1950年代と1…
1977年初出の、著者の実質的第一長編。 フランス留学から帰ってきた研究生が、指導教授の紹介で別荘地にある大邸宅でフランス語の家庭教師をすることになる。そこに住むのは20代後半と30代前半の姉妹と運転手、家政婦のみ。最近飛行機事故で亡くなった美術商…
1973年初出で、当時の高校生がよく読んでいた(と記憶)。「ソクラテスの弁明」を読めと倫理社会(当時)の教師に言われて、この作者の「ソクラテス最後の弁明」を買ってしまったという笑い話があったと思う。 さて、高校生が主人公格のミステリはこの時代に…
ある売れない推理小説家が犯人当てのリレー小説の企画を売り込みにきた。問題編はできているので、解決編をタレントでもある女性小説家にしてくれという依頼だった。女性小説家は問題編の作者の名を聞いて、眉をしかめたが、承諾した。その第一回に目を通す…
群馬県(読者の物理現実にある県とはちょっと違う)のある高校で、女子生徒が扼殺された。その直後に、同校の女性教師が自殺を遂げる。傍らには謎めいた遺書がある。そして同校の野球部監督が失踪していたが、毒殺されているのが見つかる。調査を進めると、…
ちょっと酒が入っているので、冒頭は出版社サイトの紹介文を引用することにする。 7月7日午後7時、服毒死を遂げた新進作家、坂井正夫。その死は自殺として処理されるが、親しかった編集者の中田秋子は、彼の部屋で行きあわせた女性の存在が気になり、独自に…
もともとは「モザイク事件帳」のタイトルで出版され、2008年に文庫化される時に冒頭の短編を全体の名前にした。副題のように、ミステリのサブジャンルの趣向を凝らす。 大きな森の小さな密室―犯人当て ・・・ 「会社の書類を届けにきただけなのに。森の奥深…
1946年の東京巣鴨。ニュージーランドの私立探偵が大戦中に日本近海で行方不明になった爆撃機乗りの行方を調査したいと収容所にやってきた。所長のアメリカ人大佐は、自由な行き来を承認するかわりに、収監されているBC級戦犯容疑者の記憶を取り戻せと要求す…
明治政府の刺青禁止令によって、負のスティグマになったものの職人気質の江戸っ子と愛好家と学者によって、その命脈は保たれていた。ここに彫安(ほりやす)なる昭和の名人が息子娘の3人に、児雷也(蛙)・綱手姫(蛞蝓)・大蛇丸(蛇)の柄を彫ったのが奇縁…
ずっと昔のその昔に、「Wの悲劇」を読んだ記憶がある。中身は忘れた。それ以来のトライ。1980年文庫初出なので、発表は1970年代半ばか。 ガラスの絆 ・・・ サイバ合板の社長・信之は治子と結婚して数年。夫と妻の両方に不妊の原因があり、人工授精をして、…
「教師を辞め東京に戻って三年、街鉄の技手になっていたおれのところに山嵐が訪ねてきた。赤シャツが首をくくったという。四国の中学で赤シャツは教頭、山嵐はいかつい数学の教師の同僚だった。「あいつは本当に自殺したのか」を山嵐は殺人事件をほのめかす…
「若葉萌す春、緑なす夏、紅葉の秋、枯槁の冬……そして新生の春。植物学者は四時とりどりに忙しい。その生活に重ね合わせて、あるいは花占いの果てとも見える場景に犯罪を匂わせ、あるいは自殺志願者が遺体発見を遅らせたがった理由に植物学的考察を試みる。…
「雪に閉ざされた山荘。そこは当然、交通が遮断され、電気も電話も通じていない世界。集まるのはUFO研究家など一癖も二癖もある人物達。突如、発生する殺人事件。そして、「スターウォッチャー」星園詩郎の華麗なる推理。あくまでもフェアに、真正面から「本…
「同僚の喜多助教授の誘いで、N大学工学部の低温度実験室を尋ねた犀川助教授と、西之園萌絵の師弟の前でまたも、不可思議な殺人事件が起こった。衆人環視の実験室の中で、男女2名の院生が死体となって発見されたのだ。完全密室のなかに、殺人者はどうやって…
「和戸君一家に降って湧いた騒動を見事収拾、保住君の新学期は好調な滑り出し。歌って踊れる名探偵とばかりギター片手に謎を解き、夏休みは珊瑚礁で魚と戯れ、また上高地の涼風に吹かれつつ事件の真相を看破する。馴染みの床屋や大学祭の模擬店で推理を聞か…
飲み屋にかよう中年(厄年トリオと呼んでいる)。その中に現職の刑事がいて、行き詰った事件の愚痴をこぼす。そこには、メルフェンとたぶん精神分析を学ぶ女子大生がいて(彼女の描き方は中年男の欲望のままだ、美貌の持ち主で、聡明で、感じのよい、人づき…
「田舎町の旧家・天知家で遺言が公開された夜、事件は起こった!一人、また一人と凶行に倒れる相続人たち―。遺言の内容は決して殺人を引き起こすようなものとは思えなかったのだが…。弁護士・森江春策が、連続殺人事件の深層に切り込んでゆく!屋敷を埋め尽く…
「美味しい郷土料理を給仕しながら、夫の友人が持ち込んだ問題を次々と解決してしまう新しい型の安楽椅子探偵――八王子の郊外に住む作家の奥さんが、その名探偵だ。優れた人間観察から生まれる名推理、それに勝るとも劣らない、美味しそうな手料理の数数。随…
「1781年、ウィーンで作曲家モーツァルトが死ぬ。1809年6月、作曲家ベートーヴェンは訪れた楽譜屋で、モーツァルトの娘と噂されるシレーネと出会う。彼女は、自分の父が作曲した子守唄を、モーツァルトの作品として出版した楽譜屋に、抗議しに来ていた。とこ…
収録されているのは4編。 1.ピアニストを台所へ入れるな・・・ベートーヴェンの部屋でピアニストが死んだ。彼の断末魔の叫びはアパート中に響き渡った。「よくもやったな!ベートーヴェン!」。状況証拠から冤罪を被るベートーヴェン。そこへ死んだピアニ…
「警視庁捜査一課の烏丸ひろみに届いた招待状。差出人は《トリック卿》。招かれたのはひろみを除いて、すべて大ウソつきの男と女。場所は雪深い山奥の《うそつき荘》。そこで出されるクイズをすべて解くと賞金はなんと6億円。しかし、ゲームに参加した7人…
「栗谷村の村おこしマラソン大会の最中、忽然とランナー十三人が消えた!戦国時代の山城・十三曲坂を使った十キロのコースは、途中で抜け出ることのできない、いわば大密室…。後日、消えたランナーの一人が、木に突き刺さった無惨な姿で発見された。奇妙なこ…